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第24話 貴臣の嫉妬*
ぜぇぜぇ言いながらトイレに直行しようと廊下を曲がろうとしたのに、貴臣はそれを許してくれない。
腕を引っ張られながら階段を上り、貴臣の部屋のベッドへ押し倒された。肘で体重を支えて起き上がろうとするも、肩を押さえつけられる。
「も……いいだろっ、抜いても……」
貴臣はなぜか、冷たく俺を見下ろしてくる。
なんか怒ってる……俺がちゃんと我慢できなかったのが気に入らないんだろうか。
またスイッチを入れられた。外では聞こえなかったけど、この狭い空間ではバイブ音がよく聞こえた。
「んー……もう外そうよ貴臣……俺このままじゃ……」
俺は真っ赤になってかぶりをふった。
ズボンにテントをはっているのが一目瞭然だった。
扱きたい。こすって、焦らしに焦らされた欲望を解放したかった。
「ここ、つらいですか?」
そこに視線を落としながら貴臣は言う。
やっぱり貴臣は意地悪だ。兄が今どんな状態になっているのか分かってるのに、こうやって部屋に閉じ込める。
こくんと頷くと、貴臣はもう一度ポケットに手を突っ込んだ。
また強くされて、俺は顎をのけぞらせた。
「あぁ……っ! もっ、無理だからぁ…抜いてぇ……!」
「こんな刺激で取り乱していてどうするんですか。さっきは伊岡の前で変な声まで漏らして」
貴臣はローターの電源は切らずに、俺のズボンを脱がせていく。
前の時と様子が少し違う。特訓というよりは、貴臣が自棄になって俺をいじめているように思えた。やっぱり俺が我慢出来てなくて怒っているのか。
「ごめんね貴臣。今度からは気をつけるから……」
「あぁ、見てくださいこれ」
謝っているのにスルーさえ、促されるままに下着を見て驚いた。
薄いブルー色のトランクスが濃く変色している。
先端から溢れ出るような感覚があったけど、まさかこれほどとは。ズボンに染みていなかったのが不思議なくらいだ。
「こんなにしちゃって。俺にされて、気持ちよかったです?」
「だ、だって貴臣がいきなりスイッチ入れるから」
「兄さんって普段、後ろも弄っているんですか?」
「弄ってないよ、いつも、前だけ……」
「へぇ。じゃあ素質ありますね。公衆の面前でローターで感じて、こんなにカウパーを溢れさせるだなんて」
耐えきれずに視線を外すけど。
やっぱり貴臣は、さっきから声が冷淡だ。
へたに足を動かすと、刺激がますます強くなるので慎重に起き上がった。
「あのさ、何怒ってんの? 初めてやったんだからしょうがないじゃん。我慢しようとしても、勝手に声が出ちゃうんだよ」
貴臣は俺をじっと見つめたまま、何かを考えているようだった。
前髪を掻き上げ、我に返ったように表情をふと和らげてからローターの電源を切ってくれた。
「すみません。伊岡の前で赤い顔して声を出した兄さんを見たら、なんだか胸が苦しくなって」
「えっ?」
「俺の前でだけ、そんな顔してほしいのにって思ったんです。なぜでしょう……たまに兄さんを、独占したくなってしまうんです。これはレッスンなのに、情けないですね」
うん? 言われてる意味がよく分らないぞ。
つまり、伊岡の前での態度が許せなかったってことか?
自分とのレッスンなのだから、自分の前でのみ何もかも曝け出すべきだと。
「嫉妬……したの? 伊岡に」
確信を突かれたような顔をした貴臣は、すぐに目尻を下げた。
「きっと、そういうことになるでしょうね。結局、兄さんは先輩の前でいろんな顔を見せる羽目になるくせに、こんな気持ちになっていてはダメですね。弟として兄さんが好きなので、少々欲張りになっているのかもしれません」
弟として、か。
それを聞いて、府に落ちるような、でもなんだか切なくなるような曖昧な気持ちになった。
俺だって貴臣が好きだ……そう、兄として、だ。
俺は貴臣をギュッと抱きしめた。
「どうしたんですか」
「ん? 貴臣が可愛くて」
「なんですか可愛いって。兄さんみたいな人を可愛いって言うんですよ」
子供をあやすみたいに、背中をとんとんと叩いてやった。
貴臣も下げていた腕を持ち上げ、俺の背中に手を回してくれた。
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