26 / 124

第26話 擦り付けonany披露*

「まさかこれが目的でクッション買ったの?」 「はい。枕よりもサメくんに擦り付けていた方が可愛らしいかと」  貴臣の考えている擦り付けオナニーは枕らしい。  性癖リストにはどこに擦り付けるのかは書いていない。俺はてっきり机とか椅子とか、ちょっと硬いものを使ってするのかと思っていた。実はそんなエロ動画ばっかり見ているし、一度自室の机で試してみたことがあるからだ。   「ちょうどいいじゃないですか。一気にクリアですよ」  ほとんど仰向けに寝転がっていた上半身を起こされ、サメくんの胴体を足の間に入れられた。  それに跨ってみる。単に座っただけでは反り返ったものには届かないので、手をついて重心を前に倒してみた。 「あっ……んん……ッ」  ぺニス全体をぎゅっと押し付けるようにすると、腰に甘い疼きが伝わる。  目の前に貴臣がいるのに、押し付けながら尻を前後に動かしてしまう。張り詰めたペニスと硬くなった双球(そうきゅう)が、柔らかすぎず硬すぎずのちょうどいい弾力のサメにこすれて気持ち良い。 「んっ……は、ぅん……ッ」  ゆっくり一定のペースで揺らすと、衣擦れする音に加えて下着の中がくちゅくちゅとかき混ぜられる水っぽい音が鳴った。  後孔も微弱に振動を続けている。  貴臣がポケットに手を突っ込んだのが見えて、期待に胸が震えた。強くされると思っていたけど、予想と違って強さは変わらなかった。 「兄さん、物欲しそうな顔してる」 「んっ……して、な……っ」  恥ずかしくなって両唇をぎゅっと噛み、腰を揺らし続けた。  今、あともう少しだけ強くされたらイっちゃってたのに。  わざとやってる。俺がもう少しでイくって分かってて強にしてくれない。  仕方なく、腰の動きをより速くした。  とっくに先走りの蜜で汚れてしまっているサメくんに悪いと思いながらも、そのまま玉とペニスをぎゅっと押し付けて夢中で揺すった。  破顔しながら、内から迫り上がってくる快楽に耐えきれなくなってくる。段々と息が荒くなってくる。 「ふっ……ん、ぁっ、も……はぁ……っ」  涙で視界が滲む。  あ、もう――ダメかも。  蕩け切った頭の隅でそう認識した時、貴臣が俺の耳元に唇を寄せた。 「――イってください」  重低音でささやかれた後、振動をマックスにされ、耐えきれなくなった俺は跨っていたクッションに縋り付いた。 「あっ……っ、んっ……! ……ぁんっ」  何度も腰が跳ね上がる。  下着の中に吐精している間、貴臣は俺の耳に舌先を入れて、舐めまわしていた。  濡れた音が鼓膜を伝ってダイレクトに響いてきて、ものすごく気持ちよかった。 「あ、ぁっ……たかお、みっ……」    すべてを出しきった後、荒い息をついてしばらく放心した。  すると貴臣は、今度は俺の顎を持ち上げて唇にキスをしてきた。それはそっと触れるだけのキスで、すぐに顔が離れていった。  いつの間にかバイブも止まっている。  俺はサメくんに顔を突っ伏した。 (貴臣に……キスされた。)  ドキドキと、胸が鳴る。  擦り付けオナニーよりも、ローターで感じていたことよりも、それが今日1番恥ずかしくて、そして何より……嬉しかった。  口移しじゃない。恋人同士がするような、普通のキスだった。    後片付けはやっぱり、貴臣がしてくれた。  濡れた下着を脱がしてくれて、慎重にローターを抜いてくれた。  ジンベエザメを洗面所で洗ってくれている間、俺は自分の股間を綺麗にして、そっと右耳に触れてみる。  もうすでに渇いていたけど、貴臣の濡れた舌を思い出すとまた変な気分になりそうだった。  貴臣が部屋に戻ってきても、なんでキスをしたのかは恥ずかしくて訊けなかった。  貴臣もそのことには特に触れない。  予想はたぶん、俺の気分を盛り上げる為だとか、なんとなくノリで、だとは思うけど。  伊岡に嫉妬して、俺を独占したくなるって言われた時も勘違いしそうになったけど。  キスまでされちゃったら、そうなんじゃないかと思いたくなってくる。  貴臣ってもしかして。    横になっている俺の頭を、貴臣は優しく撫でてくれた。  心地良くてつい目蓋が下がってくる。 「眠ってもいいですよ。夕飯時に起こしてあげますから」 「……うん、じゃあ、ちょっとだけ」  貴臣のにおいがするシーツと枕に顔をうめて、目を閉じた。質問は胸の中で問うだけで、口にはしないまま。  ――貴臣って……本当は俺と同じ気持ちなの?  

ともだちにシェアしよう!