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第55話 怪しい手つき*

 翌日接骨院で診てもらうと、案の定捻挫だった。  大袈裟に包帯を巻かれたし、時間も中途半端だったので学校は欠席にした。  次の日は母が学校まで送迎してくれると言ったのだが、倦怠感と頭痛で休むことにした。  熱も計ると九度近かった。  解熱剤を使えばかなり楽にはなったのだが、それでもだるさは抜けない。  週の真ん中の日の夜、貴臣は心配そうに部屋にやってきた。 「まだ何も食べる気にはなりませんか」 「うーん……」 「もし何か欲しくなったら遠慮なく言ってくださいね」 「ありがと」  捻挫にくわえて体調不良になってしまったのでシャワーも浴びれていない。  ギュッと絞ったタオルで髪や顔を拭われると気持ち良かった。 「この前から迷惑かけて悪いな。まるで介護されてるみたい」 「いえ。俺も入院した時、色々とされて嬉しかったんです。今は気にしないで、体の調子を整えることに専念してください」  貴臣はきっといいスポーツトレーナーになれそうだな、とぼんやり思っていたら、貴臣の手が俺のパジャマのボタンに触れてきたので、ぎょっとしてその手を掴んだ。 「いや、いいよ。体は自分で拭くから」 「ベタついていて気持ち悪いでしょう? 変なことはしませんから安心して」 「へ、変なことって」 「まさか病人に向かって、レッスンしましょうだなんて言いませんよ」  あっという間に全てのボタンが取っ払われ、シャツを左右に開かれた。  いつもよりも赤く染まっている2つの突起が目に入って、カッと顔が熱くなる。 「あれ……熱、まだ下がってないんですか」  熱はとっくに無いのを分かっているくせに、貴臣は意地悪く言う。  まずは首まわりをタオルが行き来して、鎖骨、そしてその下の方へゆっくりと進んでいく。  じっとりと濡れた布地が熟れた突起の上をかすめた瞬間、口が開いてしまいそうになるのをなんとか堪えた。  片方の乳首の上をこすった後、もう片方を同じようなリズムで柔らかくこすられて、あっという間に変なスイッチが入ってしまった。 「変なことしないって……」 「してませんよ。体を拭いているだけです」  嬉しそうだな、ニヤニヤして。  俺が困っているのを見て楽しんでるみたいだ。  やるなと言われたらやる男への対処法は、やいのやいの言わずに大人しく時がすぎるのを待つ、だ。  貴臣が部屋を出たあとでこっそり抜こう。そう決めた。  芯を持ってぷっくりと主張をしている胸の突起が恥ずかしくて、シャツを手繰り寄せる。  貴臣はきっと、俺の身体の変化に気付いているけど何も言わない。   「シャツ、脱いでもらえますか」 「……変なことすんなよ」 「ですから拭くだけですって。次は腕を拭きます」  俺はしぶしぶ服を脱ぎ、上半身裸になった。  片腕ずつ持ち上げられ、丁寧に拭われる。脇の下までやられるとちょっと恥ずかしい。  片方も同じようにされれば、もう終了だ。  そう思ってシャツに袖を通していたら、嫌な予感がした。貴臣は俺の下半身に視線を移している。  首をブンブンと横に振った。 「そこはいいからっ! 絶対無理!」 「まだ何も言っていませんが」 「言わなくても分かるよ! お前が次どこを拭こうとしてるかなんてっ」 「これこそ、拭かないと気持ち悪くないですか?」 「こ、これは自分で拭くから、いい」  だるい体を勢いよく起き上がらせてベッドから下り、テーブルにあったウェットティッシュの箱からシートを取り出す。  ちら、と貴臣を見るとニコニコとされたので睨み返し、背を向けてズボンの中に手を突っ込んだ。  モノを包み込むようにシートで丁寧に拭いていく。  するとじわっと何かが生み出るような感覚になった。    さっき貴臣に胸をいじられていたから、チリチリと燻っていた火がついてしまったようだ。  風邪のせいか、いつもよりも熱いそれを弄っているとあっという間に先端が真上を向いた。  先走りまで出てきたので、慌ててシートで拭き取った。

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