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第59話 ②*

「……こんな、に」  見ているこっちの方が、なぜか恥ずかしくなってくる。  俺とのレッスン中、いつもこんなに大きくしていたの?  その先端からは透明な玉の滴がじわっと滲んで、竿には血管が所々浮いていた。  俺のよりも、部屋に隠してあるディルドよりも遥かに大きい。  貴臣はもうとっくに無抵抗だった。きっと何を言っても無駄だろうと悟ったようだ。   「……」  唇を噛みながら、恐る恐るそれを握ってみた。  俺の手首くらいはありそうな太さのものを、ゆっくり上下に扱く。  貴臣の顔をじっと観察していると、何も変化していないように見えて、実は熱っぽく吐息を吐き出していたり、微妙に片眉がぴくんと反応したりしていた。  感じてくれているんだ。嬉しい。  前の時はこっちがアイマスクをしていたから見なかったけど。  今は俺が見ていて、貴臣が見ていない。  こんな感じだったのかと、改めて羞恥の気持ちが湧いてきた。  緩急をつけて上下に擦りながら、俺は少しずつ上体を前に倒していった。左足は伸ばしたままなので少々辛い体勢だが、どうにか貴臣の足の間の前に顔を持ってくることができた。  そっと、舌先でその先端をぺろっと舐めてみた。 「……ん」  貴臣から、普段聞かないような声が聞こえた。  上目づかいで貴臣を見ると、唇に力を入れて耐えていた。  俺が今、貴臣を気持ち良くしているんだと思うと、例え恋人同士にはなれなくとも、幸福感が身を包む。  猫みたいに何度もぺろぺろと舐めてやると、今度はくすぐったそうに笑っていた。 「なんですか、それ」 「え? 気持ちよくない?」 「いいですけど、どちらかと言うとくすぐったいって感じです」 「分かったよ、じゃ、ちょっと待って」  今度は口をめいっぱい広げて、あむっと咥えてみた。  全然、入らない。こいつのが相当大きいせいと、俺の顎が小さいせいで、とてもじゃないが根元までなんて入らなかった。  三分の二くらいまでを口腔に押し込み、貴臣がしてくれたみたいにゆっくりと首を上下してみる。   「んー……ん、ん……」  今度は俺が声を出しながらひたすらしゃぶってみるが、その最中、ガリッと耳の奥で嫌な音が響いた。どうやら歯で引っ掻いてしまったらしい。 「あ、悪い……痛かった?」 「いいえ」  気を取り直してもう一度口に含むが、今度は喉の奥までそれが入ってしまい、激しく咳き込んでしまった。  貴臣は俺の頭を撫でてくる。 「もういいですよ。無理しないでください」 「ん……大丈夫だから、も一回」 「マスク、取ったらダメですか」 「駄目、恥ずかしいから。ていうかお前の、デカすぎるんだよ」  単純に俺の力量不足なんだろうけど、貴臣のせいでもないこともない。  歯は立てないように、なるべく喉を拡げて……  色々と頭で考えながらしゃぶっていたら、貴臣は真面目な口調で言った。 「どうして俺が、レッスンの度にこんな風になっているのか考えたことはありますか」  俺は一旦口を離して、顔の半分が真っ黒く覆われた貴臣を見つめて考えた。濡れた唇を手で拭う。 「淫乱でむっつりスケベの変態だから?」 「兄さん」 「違うの?」 「……もういいです」 「なんだよ。そんなの、思春期だからに決まってんだろ。エロいことしてるから、勝手に体が反応するんだろ」 「へぇ。では、そういう雰囲気になれば、俺は誰に対してもここまで反応させると思うんですね」  少しだけ硬い声を出された。  言われてる意味がわからなくて、思考が停止する。   「何言ってんの?」 「……」 「誰に対してもって……いや、普通は特別な人の前じゃないとこんなに勃たせらんないとは思うけど……」 「では兄さんも同じように、特別な人の前だったら体が反応するということですよね」  カッと顔が熱くなった。  まるで『自分は特別なんですよね』と言われているみたいだった。  いくらエロいことをするとしても、そこに感情が伴っていなければ大事なところが痛くなったりしない。  例えば久保くんや秋くんと同じようなレッスンをすることになったとしても、全く興奮しないと思うし、体の変化はないと思う。  貴臣だから。特別な感情があるから、いつもドキドキして腹の奥がギュッと痛くなるんだ。  貴臣に、そんな俺の本当の気持ちが見透かされているのか?

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