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第106話 甘々な朝と待ち合わせ

 秘密のレッスンを終えた俺たち義兄弟は、新たに秘密の関係を築いていくこととなった。  新たな、2人だけの秘密。  朝目覚めてすることは、カーテンを開けて窓も開け、新鮮な空気を部屋に循環させる。その後、ベッドの上で軽くストレッチ。  ここまでは今まで通り。  けれど変わったのは…… 「おはようございます」  貴臣はだいたいこうして、俺が起きてようが寝ていようが、同じ時間帯に部屋に入ってくる。そして必ずキスを俺にくれるのだ。 「ん……」  唇を触れ合わせるだけの簡単なキスだけど、どんな栄養食品よりも即座にエネルギーがチャージできる。  今日は俺の方から、舌先でつついてみた。  貴臣はすぐに反応して唇を割り、口腔に受け入れてくれる。  甘いくちづけにくらくらした。  カーテンが風を含んでふんわりと持ち上がり、俺たちを包みこむ。  今日は休日、部活も休み。とってもいい気分だ。  だってちゃんと、貴臣は今日も俺を想ってくれている。  角度を変えながら、これでもかってくらいに舌を絡ませにいく。  しばらくしたら貴臣の方から口を離されて、困ったように笑われた。 「朝からそんなに激しいの、やめてくださいよ。したくなっちゃうでしょう」  俺は貴臣の手を引き寄せて自分の頬に持っていき、そのぬくもりを感じた。 「昨日もしたのに?」 「俺はいつだってしたいんですよ」 「あ、出た。むっつり」 「兄さんだって同じでしょう?」  俺は別に、と素っ気なく視線を外したが、たぶん嘘だってバレてる。  昨日も貴臣の部屋でエッチをした。  本当はそのまま一緒に同じベッドで眠りたいのだけど、万が一ってことがあるからしょうがない。だからこうして朝、優しく触れ合うことで満たされている。    一緒に階段を下りると、両親はいつも通り笑顔で挨拶してくれた。  母さんは、俺たちがまた2人で階段を上り下りするようになったのを見て安堵したようだった。 「今日よね? 秋臣くんと遊ぶの」  朝食中に母さんが俺に尋ねた。  今日は秋くんと外で会うことになっている。  もちろん、貴臣も一緒に。 「うん。今度は家に連れてくるよ。いいかな?」 「もちろん大歓迎よ。ご馳走作って待ってるわ」  母の隣に座る父も、同じように微笑んだ。  あの日以来、秋くんには会っていない。  けれど先週、向こうから連絡があったのでびっくりした。  秋くんの方から『会いたい』と言ってもらえるとは思わなかったから。  電車に揺られて、秋くんとの待ち合わせ場所に向かった。  到着したのは約束の10分前。  のんびり待つことにしたけど、しかし約束時間になっても、さらに20分過ぎても来なかった。  駅前のコーヒーショップの前で、と秋くんの方から指定されたのに。  どんどんと不安が募ってくる。  あれ、まさか……? 「な、なぁ貴臣。秋くん、もしや嘘吐いたのかな……⁈」  さっきメッセージも送ってみたけど、既読がつかない。  日付も時間も場所も間違いないのに。  もしかしてまたハメられたんだろうか……。 「いえ、大丈夫だと思いますよ。電話してみましょうか」  焦る俺に反して、貴臣は全く気にしていないようだ。  あぁやっぱり、貴臣は秋くんのことを悪く思ったりはしていない。  貴臣はスマホを取り出し、スピーカーをオンにした。  PRRR……と鳴っている電子音を聞きながら2人で画面を見つめていたら、その音が急に途切れた。   『ごめんお兄っ! 寝坊した~!』  今まで聞いたことのない慌てた声が返ってきて、貴臣と顔を見合わせてふふっと笑った。  良かった。秋くんは嘘を吐いていなかったって分かって。   「秋くん、今起きたの?」 『あ、怜くん? おはよー。うん、今起きた』 「どうせまた、夜更かししてたんでしょ」 『朝、1回ちゃんと起きたんだよ? でもいつの間にか2度寝してたみたい』  どこかで時間を潰してて、と言われたので、電話を切った後に目の前のカフェで待っていることにした。  お互いにカフェオレを頼み、貴臣と向かい合わせに座った。

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