7 / 7

貴方のおしりは、俺が守る!(7)

 翌朝。  俺は、佐藤くんの逞しい腕に優しく包み込まれたまま、  震えていた。 「佐藤くん、どうしよう……」 「ん……理人さん……?」 「お尻が痛い」 「えっ……」 「……」 「えぇっ!?」  気だるそうに上下していた目蓋が一気に全開になり、佐藤くんがガバッと起き上がった。 「ちょ、ちょっと見せてください!」 「あっ……!」  パンツごとズボンをずり下げられたと思ったら、おしりを左右にむにっと割られ、暴かれた秘密の場所をまじまじと見られる。  なんだよこれ!  恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい! 「うわ、ものすごく赤くなってる!」 「ひぃん!」 「あ、ごめんなさい!」 「痛いって言ってるんだから触るな!」  痛いし、  恥ずかしいし、  変な声まで上げさせられて、  なんだかものすごく、  泣きたい。 「俺のおしり守ってくれるって言ったくせに!」 「なっ……抱いてって強請ったのは理人さんでしょ!?」 「そこをグッと我慢して耐えるのが真の騎士(ナイト)ってもんだろ!」 「それ理不尽すぎない!?」  ……だめだ。  落ち着け、俺。  こんな低レベルな争いをしている場合じゃない。  俺のおしりの一大事なんだ! 「病院は……」 「絶対行かない!」 「ですよね……」  肛門科になんて誰が行くもんか……! 「わかりました、俺も男です。責任とります! ちょっと待っててください!」  凛々しく言い切ると、佐藤くんは手早く身なりを整え、玄関から飛び出して行ってしまった。  ひとりになったら、一気に不安が増殖してくる。  どうしよう。  俺のおしりが亡くなる……じゃなくて、失くなる!? 「はぁっ、はぁっ……、お待たせしました!」  佐藤くんは、ものの十分くらいで帰ってきた。 「どこ行ってたんだよぉ……」  瀕死のおしりとふたりきりにしやがって! 「ドラッグストアで、塗り薬買ってきました」 「塗り薬……?」 「薬剤師さんによると、『ああ、そういうことでしたら痔とかじゃなくて、擦れたところが炎症を起こして腫れているだけだと思うので、塗り薬で様子を見てください。ただ、しばらくはそういう営みは我慢していただいて、デリケートゾーンを休ませてあげてくださいね。そうすれば治ると思いますよ』……だそうです」 「そ、そうか、よかった!」  ……いや、よくない。  全然よくない!  俺の『デリケートゾーン』の悩みだけじゃなくて、佐藤くんと『そういう営み』をしていることまで薬剤師さんに知られてしまった。  これから行く度に「あ、彼氏とセックスしすぎてお尻が腫れた人だ」って思われる!  もうあそこのドラッグストアには行けない……! 「じゃあ理人さん、ズボンとパンツ脱いでください」 「は? な、なんで……」 「言ったでしょ、責任取るって。薬は俺が塗ります」 「い、いやだそんなの! 自分で塗る!」 「って言ったって、見えないでしょ?」 「だ、だいたい分かるだろ!」  じたばたする俺をものともせず、小さなチューブを手にした佐藤くんが迫ってくる。  じくじくと疼くおしりを気遣いながら後ずさって……いや、いると、あっという間に壁際まで追い詰められてしまった。 「ほら、理人さん。お尻出してって……」 「だ、出すもんかよ!」 「ああもう、めんどくさいな。俺の指を拒否するなら、葉瑠兄に言うけどいい?」 「そ、それだけはだめ! 絶対!」  そんなことされたら、お父さんとかお母さんとか瑠加ちゃんとか三枝とか……とにかく一番知られたくない人たちみんなに知れ渡ってしまう!  究極の選択を迫られた俺は、仕方なくベッドにうつ伏せになった。  すぐにまたおしりを丸出しにされ、むにっと拡げられてしまう。  うぅっ、なんかスースーするうぅ……! 「それじゃあ、塗りますから。力抜いててください」 「あっ……ふっ……」 「……」 「んっ……んぅ……!」 「こらこら、エッチですねえ、患者さん」 「は……?」 「これは治療ですよ? それなのに……感じてます?」 「痛いんだよバカ!」  それから一週間、俺はお尻に軟膏を塗り込められながら、佐藤くんが繰り出す渾身の『お医者さんごっこ』に付き合わされることになったのだった。 「もう絶対佐藤くんとセックスなんてしない……!」 「えぇっ、そんなぁッ!」  fin

ともだちにシェアしよう!