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貴方のおしりは、俺が守る!(7)
翌朝。
俺は、佐藤くんの逞しい腕に優しく包み込まれたまま、
震えていた。
「佐藤くん、どうしよう……」
「ん……理人さん……?」
「お尻が痛い」
「えっ……」
「……」
「えぇっ!?」
気だるそうに上下していた目蓋が一気に全開になり、佐藤くんがガバッと起き上がった。
「ちょ、ちょっと見せてください!」
「あっ……!」
パンツごとズボンをずり下げられたと思ったら、おしりを左右にむにっと割られ、暴かれた秘密の場所をまじまじと見られる。
なんだよこれ!
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!
「うわ、ものすごく赤くなってる!」
「ひぃん!」
「あ、ごめんなさい!」
「痛いって言ってるんだから触るな!」
痛いし、
恥ずかしいし、
変な声まで上げさせられて、
なんだかものすごく、
泣きたい。
「俺のおしり守ってくれるって言ったくせに!」
「なっ……抱いてって強請ったのは理人さんでしょ!?」
「そこをグッと我慢して耐えるのが真の騎士 ってもんだろ!」
「それ理不尽すぎない!?」
……だめだ。
落ち着け、俺。
こんな低レベルな争いをしている場合じゃない。
俺のおしりの一大事なんだ!
「病院は……」
「絶対行かない!」
「ですよね……」
肛門科になんて誰が行くもんか……!
「わかりました、俺も男です。責任とります! ちょっと待っててください!」
凛々しく言い切ると、佐藤くんは手早く身なりを整え、玄関から飛び出して行ってしまった。
ひとりになったら、一気に不安が増殖してくる。
どうしよう。
俺のおしりが亡くなる……じゃなくて、失くなる!?
「はぁっ、はぁっ……、お待たせしました!」
佐藤くんは、ものの十分くらいで帰ってきた。
「どこ行ってたんだよぉ……」
瀕死のおしりとふたりきりにしやがって!
「ドラッグストアで、塗り薬買ってきました」
「塗り薬……?」
「薬剤師さんによると、『ああ、そういうことでしたら痔とかじゃなくて、擦れたところが炎症を起こして腫れているだけだと思うので、塗り薬で様子を見てください。ただ、しばらくはそういう営みは我慢していただいて、デリケートゾーンを休ませてあげてくださいね。そうすれば治ると思いますよ』……だそうです」
「そ、そうか、よかった!」
……いや、よくない。
全然よくない!
俺の『デリケートゾーン』の悩みだけじゃなくて、佐藤くんと『そういう営み』をしていることまで薬剤師さんに知られてしまった。
これから行く度に「あ、彼氏とセックスしすぎてお尻が腫れた人だ」って思われる!
もうあそこのドラッグストアには行けない……!
「じゃあ理人さん、ズボンとパンツ脱いでください」
「は? な、なんで……」
「言ったでしょ、責任取るって。薬は俺が塗ります」
「い、いやだそんなの! 自分で塗る!」
「って言ったって、見えないでしょ?」
「だ、だいたい分かるだろ!」
じたばたする俺をものともせず、小さなチューブを手にした佐藤くんが迫ってくる。
じくじくと疼くおしりを気遣いながら後ずさって……いや、尻ずさっていると、あっという間に壁際まで追い詰められてしまった。
「ほら、理人さん。お尻出してって……」
「だ、出すもんかよ!」
「ああもう、めんどくさいな。俺の指を拒否するなら、葉瑠兄に言うけどいい?」
「そ、それだけはだめ! 絶対!」
そんなことされたら、お父さんとかお母さんとか瑠加ちゃんとか三枝とか……とにかく一番知られたくない人たちみんなに知れ渡ってしまう!
究極の選択を迫られた俺は、仕方なくベッドにうつ伏せになった。
すぐにまたおしりを丸出しにされ、むにっと拡げられてしまう。
うぅっ、なんかスースーするうぅ……!
「それじゃあ、塗りますから。力抜いててください」
「あっ……ふっ……」
「……」
「んっ……んぅ……!」
「こらこら、エッチですねえ、患者さん」
「は……?」
「これは治療ですよ? それなのに……感じてます?」
「痛いんだよバカ!」
それから一週間、俺はお尻に軟膏を塗り込められながら、佐藤くんが繰り出す渾身の『お医者さんごっこ』に付き合わされることになったのだった。
「もう絶対佐藤くんとセックスなんてしない……!」
「えぇっ、そんなぁッ!」
fin
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