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貴方のおしりは、俺が守る!(6)
「んっ……んぅ……」
「理人さんが自分でやってるとこ、見たかった……」
「死んでも見せるか……っ」
俺のおしりを弄りながら、佐藤くんが笑う。
でもすぐに、整った眉毛が不自然な八の字を描いた。
「どうしてもだめ……?」
「あ、あ、あ!」
わざとらしく拗ねてみせながら、筋張った指を、ぐぐ……と奥まで押し込んでくる。
仰け反った首筋に、熱い滑りがしゃぶりついた。
ふたりの間で擦れ合った下半身が、ぐちゅりと音を立てる。
「うあっ……」
「もしかして、この三日間なにもしなかったんですか?」
「な、なんでひとりでしなきゃっ、あ、ならないんだよっ。佐藤くんが、い、一緒にいるのにっ……あ、あん!」
「理人さんがそういうかわいいことばっかり言うから、俺のムラムラが止まらないんですよ」
「いちいち俺のせいにすんのやめろ……っ」
ぐちぐち。
ぬちょぬちょ。
粘ついたいやらしい音が、すでに火照った頬の温度をさらに上昇させていく。
鍵盤の上を舞い、金平糖のように甘く澄んだ音を奏でる繊細な指が、今は俺の喉を干上がらせ、腰を浮かせていた。
「おい、いつまでやってんだ……!」
もう、奥が疼いてたまらないのに。
「言ったでしょ。理人さんのおしりは俺が守るんです」
「んっ……んんっ……も、いいからぁ……っ」
早く、早く。
「よくない」
早く、佐藤くんを……!
「も、いいって言って……あ、あふぅん!」
「理人さんってここ撫でられるの好きですよね」
「ぃあっ……あ、あ、あ!」
「ほら、最高にいい声が出る……」
「お、お前、禁断の扉を開けようとしてるだろ……っ」
「俺の好きにしていいって言ったの、理人さんでしょ?」
にやりと口角を歪ませながら、佐藤くんは敏感なそこを攻めるのを止めてくれない。
ゾクゾクと心地良い快感が寄せては引き、引いては大きくなって返ってくる。
気持ちいい。
ものすごく気持ちいい。
でも、
俺がほしいのはこれじゃない。
「やっ……めろ!」
「えっ」
「今すぐやめろ! 指を抜け!」
「あ、え、ちょっ……」
「言っただろ。俺は、英瑠が欲しいんだ!」
佐藤くんの視線が揺れたのは、ほんの一瞬だった。
素早く空気が動き、あっという間に両脚が抱え上げられる。
そして当てがわれたのは、ほしくてほしくてたまらなかった大好きな人の大好きなもの。
貪欲なほど昂った雄の象徴が、入念に準備されたそこにズブズブと埋め込まれていく。
「あっ……あぁん……ッ」
あ、うそ。
やばい。
イ……く!
「ん、んん――ッ」
「……っ」
「は、あ……はあ……っ」
「理人さん……?」
「……」
「もしかして、挿れただけでイッちゃった……?」
「……イッてない」
「じゃあこのドロドロは?」
「っ」
「ああもう、やっぱり……だめだ」
「ちょ、待っ……イ、イッたばっかあぅ、あ、あ!」
佐藤くんが、いまだ絶頂後の余韻に浸っていた俺のそれを強引に扱きはじめた。
まるで電流がほとばしるように目の前の世界がチカチカと瞬き、激しすぎる刺激が背中をかけ上っていく。
「あっ、さ、佐藤くんっ」
「なんですか? 頼まれても止めませんよ」
「動いてッ」
「……」
「うしろも、気持ちよくしてぇ……!」
次第に曖昧になっていく世界の端っこで、獣のような唸り声が聞こえる。
僅かの間ののち、腸の奥深くが突き上げられた。
「ひっ……ぃん……!」
「もう、考えるのやめた」
「えっ……あ、あ、き、きもちい……あ、あぁん!」
「理人さんがそのつもりなら、俺の好きにさせてもらいます……っ」
それからはもう、何度懇願しても佐藤くんは止めてくれなくて、
「だ、だめぇっ……も、許しッ……」
「許しません」
「あ、あ、ま、また……出、るッ」
何度も、何度も繋がって、
何度も出して、
何度も出されて、
「はあっ……はあっ……」
「ふっ……ぅ、ふうん……!」
年甲斐もなく夢中になって絡み合っていたら、いつの間にか日付が変わっていて、
「んっ……ん、んん――ッ」
「っ……」
抗議するように軋んでいたベッドがようやく静かになる頃には、
「……」
「……」
「……」
「佐藤くん?」
「……」
「大丈夫か……?」
佐藤くんがゲッソリしていた。
「なんでだろ……」
「え?」
「俺が理人さんを抱いてたはずなのに、なんか搾り取られた気分……」
「はあ……?」
「ずるいんですよ、理人さんは。やめろって言ったり、もっとって言ったり、抜けって言ったり、抜くなって言ったり……」
「そんな、こと……言ってない」
「言いました。言いまくりでしたよこんちくしょう……」
心の底から悔しそうな佐藤くんの声が、俺の頰の筋肉をたるませていく。
それが笑みに変わる前に、上半身ごと佐藤くんの胸板に引っ付いた。
穏やかだった鼓動が、一気に速くなる。
「ね、理人さん」
「ん?」
「今度、ハメ撮りしてみませんか?」
「ハメ……撮り?」
「こう、カメラを構えながらアハーンウフーンって……」
「はあ!? 絶対やだ!」
「えー? やってみたら理人さん絶対興奮すると思うんだけどなあ。それに、俺の暇つぶしにもなるし」
「は? なんで?」
「ほら、ハメ撮りしておけば理人さんが仕事中にも、録画した理人さんのあられもない姿を見ながらシコシコできる……あぃて!」
湿った肌をぽかりと叩くと、佐藤くんが大袈裟に痛がり、乱暴に俺を腕の中に閉じ込めた。
髪を揺らす呼吸のリズムが、なぜだかすごく楽しそうだ。
「理人さん」
「……なんだよ」
「好きです」
「……」
「大好きです」
ただ見つめることしかできない俺の額に優しく口づけ、佐藤くんは向日葵の笑顔で笑った。
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