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第1話

「ごちそうさまでした」 「でった!」 手を合わせながらそう発した沙耶の頭を撫でてやると、「むふふ〜」と笑いながらこちらに視線を向けてくる。 4歳のこの少女は俺の恋人……雅也の姉、菜穂さんの子供だ。 俺たちの関係を知り、何度も相談にものってくれていた菜穂さんは、1年前に旦那さんと共に交通事故にあい、この世にはもういない。 告別式の日、泣き続ける俺と魂が抜けたような雅也の手を取り微笑んだ沙耶を見て、雅也が引き取り育てると決意した。 そして俺も全力で支えると決めて、こうして休みの日は雅也の家で、3人仲良く過ごしている。 毎週ここへ来る俺に、雅也は何度も「一緒に住もう」と言ってくれた。 確かに一緒に住めば、常に子育ての手助けが出来るし、四六時中一緒にいられる。 嬉しい申し出だけど、俺たちの関係……俺の存在が、沙耶の成長に悪影響を与えるのではと思うと、頷くことはできない。 そんなことを、何度も繰り返していたんだ。 「俺は食器を洗ってくるから、梓は沙耶と遊んでてくれる?」 「今日は、俺が当番の日だろ? 俺がやるーー」 「やー! 沙耶、今はあっくんと遊びたい〜!」 俺の腕を掴み、いやいや〜と首を振る沙耶。 こんな可愛いお願いをされては、俺も断るわけにはいかない。 「じゃあ、帰るまでの時間……30分だけな?」 「うんっ! あっくん、今日はかくれんぼしよ? あっくん鬼ね?」 俺の意見を聞くことはなく、内容も配役もトントンと決まっていく。 「はいはい。んじゃ、いつも通り50数えるぞー」 目を瞑る前に、雅也と沙耶が視線を合わせ笑っていた気がするが、今は気にしないでおこう。 「いーち……にぃー……」 その場で膝を抱えるように座り直すと、俺は数を数え始めた。

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