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十三章 告白と婚約と
「楽しかったね、温泉」
「瑠衣、旅行好きなんだ」
「自分でも知らなかったけど、そうみたい」
「また、どっか行こうな」
そんなことを喋っているうちに、寿士と瑠衣の乗ったタクシーはマンションの前に止まった。
自動ドアが開き、瑠衣が車外へ降りようとした途端、誰かが押し入って来てシートに尻をねじ込んだ。
「運転手さん、少し席を外してくれる?」
「陽詩!?」
陽詩が万札を数枚握らせると、運転手は車外に出ていった。
「少しだけですよ?」
「すぐ、済むよ」
そして陽詩は、寿士の方に向き合った。
「なんで、電話に出てくれなかったの? メールもしたのに。ラインも」
「今まで温泉に行ってたんだ。瑠衣と一緒に」
誰にも邪魔されたくなかったから、電源を切っておいた。
そう言う寿士は、飄々とした顔をしている。
「で? 何の用?」
「何の用、だって……!?」
陽詩は、憤った。
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