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第十二章・9

 二人で一つの布団にくるまって、寿士と瑠衣は眠った。 「寿士さん?」  返事が無い。 「もう、眠っちゃったんだね」  今日は宿の近くにある湖で、ボート遊びをした。  漕ぐのはもっぱら寿士の方だったので、疲れたんだろうな、と瑠衣は考えた。 「こんなに幸せいっぱいもらっちゃって、いいのかな」  だけど。 「寿士さんは、僕のこと好きなのかな。どうかな?」  眠る寿士に問いかけながら、そっと彼の鼻をつまんだ。 『好きだよ』 『ありがと』  俺も好きだ、とは言ってくれないんだね。  不安を振り払うために、瑠衣は寿士の唇にキスをした。  長いこと、口づけていた。

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