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ヒューの料理①~きのことアスパラとベーコンの醤油バターパスタ~
「お待たせ」
そういって大人の姿のヒューがテーブルにおいたのは、香ばしいバターとショウユの香りがするできたてのパスタだ。
湯気が立って美味しそうだ。アスパラの緑とベーコンのピンクの色が綺麗だ。きのこはいろいろな種類のきのこが入っているようだった。
ラーン王国ではパスタという小麦粉で作られた麺は一部の高級なレストランでしか扱われていない。一般的に食べられているのはライ麦を使った黒い硬いパンだ。ヒューの出してくれる白いパンは見たことがない。パンも高級になるところは麦粥になる。
多分、もっと南の方で作られているんだろう。大国、アルデリア王国では食べられているのだろうか。
「いただきます。」
ヒューが言う食べる前の挨拶だ。俺もそれを真似ていただきますといってから、フォークで巻き取って食べる。
ふわっとバターの香りが口の中に広がって、ガーリックやスパイスの香り、そしてショウユのコクがあとからくる。
アスパラはみずみずしく、ベーコンは脂の甘みが舌の上で蕩けるように広がった。それがパスタに絶妙に絡まって俺は無言であっという間に平らげてしまった。
他にワインビネガーで作ったさっぱりとしたドレッシングをかけたサラダにコンソメスープが添えられていた。それもとても美味しかった。
「ごちそうさま。」
全ての皿を平らげた俺はこれまたヒューの口癖である、食べ終わったときに言う挨拶を口にした。
ヒューはまだ3分の2ほど食べ終わったところで、俺の言葉に顔をあげた。
「あ、もう食べ終わったの??じゃあ、デザートでも食べる?」
そういって出してくれたのが、桃を使ったデザートだ。
白い丸い皿に透明感のあるほんのりピンク色のゼリーが敷き詰められて、その上に皿より一回り小さい、丸いケーキが乗っていた。
下層に桃のババロア、4層目にスポンジ、3層目にカスタードクリームのなかに桃の果肉が入っている。
2層目のスポンジに挟まれており、最上層はホイップクリームでデコレーションされた上に、串切りされた桃の果肉が扇のように乗せられて、ミントの葉が乗っていた。
「なにこれ!」
もの凄く美味しい。一口目でその美味しさに舌が蕩けるかと思った。
「桃のケーキ。夏が旬だからね。アスパラも旬だし。やっぱり旬のものは美味しいよね。前世では果物屋さんがカフェをやっていたところがあって、旬ごとに果物を使ったケーキを売っていたよ。」
やっと食べ終わったヒューが紅茶を淹れてくれた。俺は早食いなのだろうか。
「へえ。きっとものすごく美味しかったんだろうなあ。」
俺がパクパクとケーキを平らげながら、そう言っているとヒューがくすくす笑って俺を見た。
「じゃあ、片端から再現しよう。材料がないものは、採取しにいけばいいしね。」
ヒュー大好きだ!
「メルトはしゃべらなくても、顔がすべてを語るときがあるね。沈黙の騎士ってつけた人は全然メルトをわかってなかったんだろうなあ。」
そういって、ヒューは俺にキスをした。口の中に残ったクリームをヒューの舌が攫っていった。
俺は真っ赤になった。
「ごちそうさま。」
口を離した後、濡れた唇を舌で拭いながらそういったヒューを見て、さらに真っ赤になったのは言うまでもない。
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