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第1話 ここはとある

ここはとある駅前にある飲み屋。 「なぁ。やっぱり杏ってあやしくね?」 杏って言うのは僕の元カノ。 「あやしいって?あ、僕生グレープフルーツサワーね」 「すみませーん。生グレープフルーツサワーと生レモンサワーお願いしまーす。だってあいつこの間山下と一緒にいたぞ」 友達は生レモンサワー。 僕は生グレープフルーツサワー。 二人で飲みに来て最初に頼むのはいつもこれ。 「……うん」 「うん……って何だよ。お前の彼女とお前の友達の山下が二人で日曜の昼下がりに仲良さそうに買い物してたんだぜ?」 「してるんじゃない?あの二人付き合い始めたらしいから」 「…………はぁ?」 「何日か前に二日前別れたよ。僕達」 「へ」 「普通に言われたんだ。山下のこと好きになったから別れてって」 途端に眉間にシワを寄せる友達。 「……で、お前は何て言ったんだよ」 「へーそうなんだ。分かったーって」 「……はぁ?それで良いのかよっ!杏ちゃん可愛いなぁ~ってあんなにデレデレしてたのに!何そんなドライな別れ!?」 「生レモンサワーと生グレープフルーツサワーお待たせしましたー!」 「ども。杏ちゃん可愛いよ。今も可愛いよ!でも僕のことより山下のこと好きになっちゃったんだって。だから仕方なくない?僕も正直引き留めるほど杏ちゃんのこと……想ってなかったみたいな?」 「……はぁぁ……(さくら)……飲め……今日は何杯でも飲んでよし」 「え、うん。ありがとう。陸も飲んでお疲れ~」 「……お疲れ~。ったくもっと怒ってもよくね?二日前って……俺が二人見たの一週間前の日曜だぜ?明らかに二股されてんじゃん」 「……そうだね。でももうその前から何となく分かってたから別れ話きたときもそんなに驚かなかったんだよね」 「分かってたって……はぁ~!俺ならその時点でぶちギレるけどな。ったく山下も山下だぜ」 「山ぴーカッコいいし、杏ちゃんとお似合いだと思う。僕なんかよりもお洒落で男らしいし、守ってくれそうっていうの?僕ってお洒落とか分からないしカッコよくないし。普通の普通だし」 「桜はそういうの興味ないだけだろ?のんびりしたところがお前の取り柄。俺は軽い山下よりも桜の方が一緒にいて楽だけど~。サワーおかえりするだろ?あっと鶏から頼み忘れてる」 「うん」

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