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第46話 「……そう言えば、
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「……そう言えば、ベッドの事でもめたことがありましたよね」
「ん?」
「あ、いいえ。ちょっと懐かしいことを思い返してました」
開放的な窓から心地よい潮の風が吹き込んでくる。
波の音は昨日は力強く響いていたのに、今日はとても穏やかだ。
窓から見える景色は、青く透き通った海と、抜けるような青空。
えーと、こちらはインド洋にある島のとある高級リゾート地。
京さんと僕が出会ってからなんとですね10年ほどの月日が経ってます!
強引な京さんに拉致られてからもう10年経ったのかぁ~と寝間着から真新しいTシャツに着替えながら思い返しておりました。
「懐かしい?」
「はい、僕たちが出会った時のことです。ん……ちょっと……くすぐったいですよ」
後ろから抱き寄せられ、耳たぶを甘噛みしながらじゃれてくるのは、数年前まで城崎京と名乗っていた人。
あの時と比べて彼の外見は何も変わらない。しいて変わったといえば、伸ばし始めた髪の毛くらいだろうか。
10年経っても年を取らないのは、彼が吸血鬼の血を受け継いでいるからだ。
京さんは出会った時と変わらぬ美貌と伸ばしている髪によって、気だるそうな男の色気がむんむんと漂っていた。
「髪結構伸びましたよね。後ろで一つに纏められるようになっちゃいました。切らないんですか?」
「だって、この髪型桜好きだろ?」
「……好きですけど、京さんのモテ具合がエグイんで最近少し嫌です。昨日もビーチで誘われてました」
「あぁ、そういえばそうだったかな。妬いたの?」
「妬くに決まってます。色気が駄々洩れてるんですよ」
「そうか。嬉しいな」
「ん……っ」
顎をすくい上げられ唇を塞がれた。
毎日しているキスでも求められると嬉しくてたまらない。
これから出かけるというのに、抱きしめ合ってお互いを求めあう。優しいのにしっかり口内を味わうから身体の内側が熱くなってきてしまって困る。
「……そういう桜も、どんどん魅力的になって来て内心不安で仕方がないんだけど。タンクトップを禁止してよかった。昨日はどこぞの野郎に桜の可愛い乳首をサービスしてしまうところだった」
「……み、見えてませんって。心配し過ぎですよ」
唇が離れて至近距離で囁かれるけど、その内容は意味不明だ。
「本人が自覚がないからこっちはたまらない気持ちになるんだぞ。桜の綺麗な肌は他人には目の毒だ。桜に俺の血を上げてからの桜の変化に俺はもうどうしたらいいのか」
「す、すみません。それはもう何年も何年も話し合ってきましたが、本当……僕なんかのために」
「馬鹿。僕なんかって使うなって言ってるだろ。観光から帰ったらお仕置きだ。それに桜の変化は俺にとっては喜ばしい変化なんだ。もちろん出逢った頃の桜も魅力的だけど、今の方がエロ……いや、色っぽくてさらに可愛いから。また色が抜けてきたな」
「はい……黒髪だったのが茶髪になって……またさらに……僕このまま不良になってしまうんでしょうか」
「はは………不良じゃないだろ。このままブロンドに変わるのかな?カラーリングしてる訳じゃないから艶やかで綺麗だし、瞳の色は俺の目に近しく変化してるな。面白い……」
「あの……僕、吸血鬼になっちゃうんですか?」
「いや、ならないと思うけど」
そう……あの日京さんから血を貰った僕は少しずつ身体が変化していた。まずは年を取らないらしい。
そして髪の色や瞳の色が変わってきたことだ。
今は明るい栗毛のようだけど、根本の色がまた薄くなってきているような気がする。
それは髪だけではく全身の毛がそうなっていた。
もしかしたら僕本来の姿というのがあって、それに近付いていっているのかもしれないと京さんは言っている。だけど身近な人からしたら異様な変化で色々怪しまれてしまう。
「タイミング的にもよかった。数年したら日本から離れようと考えていたから、桜が気にすることはないんだ。年を取らないっていうのも面倒くさいものだよな」
「……」
僕の身体に変化が出始めてすぐに京さんは取締役を降り、あっさりと会社を辞めてしまったのでとても驚いた。そして表舞台から去り、僕を連れて雲隠れするように日本を離れた。
拠点を日本から海外へと移し(当然僕も一緒に)現在はアメリカに住んでいるけど、表立ったビジネスはしていない。ちなみに京さんと僕は現在は全く違う人間として生活している。実は名前も変わっているけど、ここでは紛らわしいので以前の名前を使用してます。
仕事はしてはいないけれど(たぶん)、どうしてかお金には余裕があるらしく?今も南の島の高級リゾートのコテージに滞在していた。
一度心配で大丈夫なのかと聞いたけど、「長年金持ちやってるからお金は腐るほどあるんだ。あ、訳ありセレブ御用達の秘密銀行っていうのがあってね……あれこれあれこれ……」か、完全にブラックな匂いがしたからもうその話題はふらないようにした。
「桜は女性からも男性からも人気だから気が気じゃないよ。もしもの時の護身術を習う必要があるな」
「そんな何言って……人気とかないです。それよりも!今日のダイビング!ウミガメに出会えるといいなぁ」
「そうだな。海も穏やかだしいい天気だしきっと会えるよ」
「はい!……あ、あの京さん」
「うん」
「……あの……京さんの今の髪型ですけど、僕好きなんで切らなくてもいいですよ」
「……」
「京さんがモテるのはそれだけ京さんがカッコいいからってことだから……仕方がないから我慢します」
「……うん……そういうこと言う桜がとっても可愛いって知ってる?可愛いこと言って、いい匂いさせて……本当帰ったらお仕置きだ」
「可愛くはないです。でも京さんのこと大好きですよ。誰よりも」
「はは……知ってる。桜のことを一番見てるのは俺だからね。桜はずっと俺の桜だから」
「はい」
「愛してる」
「は、はい!」
京さんと出逢ってから僕の人生は180度変わってしまった。
未だに驚くことばかりで慣れない生活を送っている。
だけど京さんに美味しく食べられる為に存在している僕は今とっても幸せだし、たまらなく京さんのことが好きだ。京さんもこんな僕を必要としてくれるから嬉しい。
だからこの先もずっと京さんと一緒にいたいと思う。
あの……すみません。もしかしたら僕は金髪になってしまうかもしれないけど、不良じゃないので!
もし日本にまた戻って来たときは再びお会いできたら嬉しいです。
その時は!どうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました!
城崎さんノ美味しいおやつ。
・おしまい・
お付き合い下さりありがとうございました。
_(._.)_白睦
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