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第23話

 缶ビールを拾ってきてプルタブを引いた。泡が噴き出し、それはシャンパンの栓を抜いたときのそれを上回るほど景気のいい眺めだ。  缶ビールを片手に、俺もジョガーパンツをくつろげた。いきり立った自身を掌でくるみ、ゆるゆるとしごく。  嬌態を肴に〝寝取られ〟を愉しむのはオツだ。よがり狂っているときのカイトは、最高に可愛い。  柴田にキスを迫られるたびにイヤイヤをして、唇を貪る権利があるのは唯一、杜野尚文だけと、すげなくするところなど男冥利に尽きる。  愛している、と投げキッスで伝えると、カイトは唇で受け止める真似で応じ、柴田を大いにくやしがらせた。  半月ぶりに星空が広がった。乾杯、と赤く輝くアンタレスに向かって缶を掲げた。  もうすぐ夏本番だ。タンクトップを着て街に繰り出し、二の腕に青黒く盛り上がったK・Kを見せびらかして歩ける季節の到来だ。  俺とカイトのような仲のことを、俗に割れ鍋に綴じ蓋というんだろうな。治療を要する共依存カップル、と精神科医がしたり顔でほざこうが、くそ食らえだ。  俺たちを引き裂こうとするやつは何人(なんびと)たりとも赦さない。誓って、血反吐の海に沈めてやる。  俺たちの愛は至純のそれだ、と世界の終わりがくるまでに必ず認めさせてやる。   さしあたって、こいつに。  リズミカルに動く尻を踏みしだいた。バックでまぐわっていたのが崩れて、蹴りごろな感じにタマがぶらぶらと揺れた。 「俺の許可があればカイトを抱くのは自由だ。だけどルールを破ったときは……」  代償は高いぞ、と匂わせるふうに爪先でタマをつつき、にこやかに言葉を継いだ。 「これをもぎ取ってカラスの餌にしてやる。肝に銘じとけ」 「いま……ん、ん、ビビらせないでよ……柴田の萎えてシラけちゃうよ」 「勃たせてやるとこからやり直せば、長く愉しめて結果オーライだろうが」    念を押す意味で、ちょんとタマを蹴った。以前の俺は平和主義で、喧嘩のけの字もしたことがなかった。  柴田が覿面に蒼ざめたあたり、題して〝恫喝術〟の初歩をスパルタ方式で教えてくれたあの男に感謝だな。  最愛の人と見つめ合い、濃厚なくちづけを交わす。  かけがえのないパートナーに巡り合えた歓びを、あらためて嚙みしめながら。     ──了──

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