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第1話

 夜駆ける姿に心奪われた。  明らかに人ではない。  暗闇を灯りなく、軽々と跳びはしる。  足音すらしなかった。    彼はとても美しかった。  人を嫌ってここに来た。  この三年人などみなかった。  でも、山の中で気付けばふと誰かを探してしまう。  そんな自分が嫌になっていた。  まだあきらめられないのかと。  そんな時に彼をみつけた。  明らかに人ではない彼を。  思わず呼びかけたなら、驚き瞬く間に消えてしまった  近くでその目が見たかった。  闇に光る目は近くで見たらどんな色なのか?  人間の嘘を見つめたことのないその目は。  軽やかに闇を走りながら歌うあの声をすぐ近くで聞きたかった。  耳元でならその声はどう響くのか?  そして何より、あの細く長い手足に、手足を絡み合わせ、思うまま貫きたいと思った。  でもそんな欲望をいだいてしまう、そんな自分を嫌悪した。  でも、もう何も考えられない。  彼のことしか。  彼について知るため、人を避けて出来るだけいかない地元の村にさえ下りて行った。  村人達は「引きこもり」が出てきたことに驚いたが、珍しがって話かけてきた。  聞きたいことがあるから、忘れかけてた、でも昔は得意だった人との関わり方の技術を駆使した。    村人の好奇心も満たしてやる。  都会で財を成したこと。  でもすっかり都会が嫌になり、財産のほとんどを欲しがっていた弟に渡し、山に引きこもったこと。    今は会社を引き継いだ弟からのわずかばかりの送金で生きていること。  もう金持ちではないし、弟に財産を奪われたというのは村人達にもお気に召した。   ビールを奢ってくれ、その上でこちらが聞きたがっていたことに答えてくれた。  彼について。  答えはそれほど多くはなかった。     長く長く昔からいる。  人とは関わらない。  たまに迷い倒れた人に食べ物や水をあたえることはある。  おそらく一人ぼっちで永く永くそこにいる。  村人は妖精だと思っていた。   妖精でも、何でもいい。  彼ならば。  他にもいくつか興味深いことを教えてくれた。  山に帰ろうとすると、村人は言った。  「弟さんは酷いヤツだね。いつか罰があたるよ」    私は笑った。  最後の日にもう動けなくなるまで犯した弟の姿を思い出して。    許して・・・もう許してくれ  弟は何度も懇願したが赦さなかった。  私しかしらない場所をえぐり続け、貫き、刺した。  馴れきった身体は、限界を超えても痙攣し続けた。  気を失っても犯し続けた。  精液が溢れ出し、こぼれても、そこを犯し、満たし続けた。     「・・・そうだね」  私は村人に言った。  罰ならもう与えている。  冷酷な義理の父親から、競争を強いられてきた。  兄に負けるな、弟に負けるな、と。  父親は実力を重んじた。  だから妻の連れ子である私を実の子と同じ用に扱った。  父親の愛人の同じ年の息子が弟だった。  父は狂った男だったから、妻と愛人とその子供達を一つの家の中に住まわせた。  妻の部屋の隣りに愛人の部屋がある、異様な屋敷。  私と弟も隣り合わせの部屋だった。  母親は愛人を承知で父と結婚したが、ここまで狂っているとは思わなかっただろう。  でも、別れようとはしなかった。  父は母親達のいがみ合わせ、子供達を戦わせるのが好きなサデディストだった。  私達は争うしかなかった出会った時から。  そしてだからこそ。  互いに捕らわれていたからこそ、お互いを貪りあった。  まだよくわからない頃は、真夜中に布団に潜り込み、身体を触りあった。  いつから始まったのかもわからない。  どちらからだったかも。  ただ、暗闇の中、布団の中で、互いの身体を撫で合い、さわり合い、こすりつけあった  滑らかな弟の肌。  肌の匂い。  互いの性器に触れ合った。  気持ち良かった。  戦うべき相手だからこそ。  言葉はなかった。    成長していく事にそれはエスカートし、もう13の頃には身体を繋げることを覚えてた。  言葉はないまま、繋がり合う。  ・・・・・・挿れたのは私だ。  弟はその夜、初めて私に抵抗した。  私が何をしようとしているか知って。  でも、身体がその頃は 私の方が大きかったし、それがバレる方が私たちには怖かったから、弟はすぐに諦めた。  声を堪えて涙を浮かべて泣く姿に、はじめて愛しさを感じた。  奥まで押し込んだそこのキツさ暖かさ、痛みにこわばる身体、そして頬に伝う涙、噛み締めた唇を見た時・・・、その姿に胸が痛んで、胸の奥が甘くて、なぜか泣きたくなった。  唇にキスをしたのも初めてだった。  開かれた唇から舌を絡ませたのも。  泣く弟の舌を貪りながら必死で腰を振った。  中に放った時抱きしめていた。  離れたくない。  そう思って。  泣いてる弟に何度もキスしながら、また中で大きくなった。  小さく嫌だ・・・と泣かれたけど、その唇にキスして謝った。  ごめん。と。  弟に生まれて初めて謝った。  許して、そう何度も囁きながらまた腰を動かしはじめてしまった。  気持ちよくて。  胸が痛かったから。  可愛い  そう何度もつぶやいたのもその夜だ。  可愛いかった。  あの傲慢な弟が。  身体をふるわせ、泣いているなんて。  弟は泣きに泣いたけれど、終わった後も泣きながらこの手を振り切ってベッドを離れたけど・・・次の夜もやってきた。  震えながら抱きしめたのは覚えてる。  もう来てくれないかと思って怯えていたから  言葉は相変わらずなかったけれど。  普段は直接いがみ合いこそしないが、敵として向き合い、相手を叩きのめすために全力を尽くした。  この世界は競争だから。  弟は傲慢で残酷で、有能だった。  私よりも。  私は弟より人を上手く使うのが上手かった。  足りない部分は、他人で補えばいい。  親しみやすい、と言われ、弟のように崇拝の対象ではなかったが、使える駒は沢山持っていた。  私達の対立はさらに深まっていた。  でも、夜になれば弟の身体は柔らかく溶けた。  この腕の中だけでは。  誰もこんな男が、こうなるなんて・・・思わないだろう。    近寄り難い王様が、この腕の中ですすり泣く。  私より小さかった身体は、今では少し弟の方が大きくなったけれど、私が挿れて、弟が受け入れることには変わりがなかった。  上にのしかかる時だけ、いつも少し震える。   可愛いすぎた。    大学に入り、マンションを借りてからはもっと互いにのめり込んだ。  お互い競うため、と同じマンションの部屋をかりても誰も不思議に思わない。  妻と愛人が競い合う家の子供なのだから。  家の者に隠れることなく、貪りあえるのは最高だった。  言葉は相変わらずあまりなかった。  ただ彼女を連れてくる時は申告しあった。   弟の彼女は常に美人で背が高くて、気位のたかそうな彼女達だった。  月単位で変わる。  弟が獣のように彼女達を抱いていたのを知っている。  女の悲鳴のような、声は何度も聞いた。  弟にはセックスも支配だった。  高慢な彼女達は弟に溺れた。    定期的に入れ替わり、捨てられた彼女達に恨まれながら、でも、弟は貪欲に女を抱き、そうでない夜、もしくは抱いたその後に私に抱かれた。  私は弟と違って、長く彼女とはつきあった。  大切にした。  彼女達はみんな可愛くて賢くて、優しかった。  好みは見かけより中身だったし。  女の子は女の子で良かった。  でも、弟を、あんな男を抱いて泣かせることに比べたら。  涙をぬぐってキスしてやることの可愛さに比べたら。  鍛え上げた身体を愛撫した。  誰もこの男が胸を弄られ、そこでイくなんて知らないだろう。  自分から尻を上げて、挿れられるのを待つなんて知らないだろう。  イかせて   イかせて  そう泣きながら懇願するなんて知らないだろう。  酷くされるのか好きだなんて。  乱暴に後ろから突かれるのが大好きだった。  中で出して  と強請るなんて知らないだろう。  よりハマっていたのはこっちの方だ。  弟を抱く時だけは・・・私が獣になった。  彼女達の誰にもそんなことは思ったことはなかった。      可愛くて可愛くて、食べてしまいたいと思った。  弟を貫くことをやめられなかった。  とは言え、弟が彼女達にしたように、噛んだり首を締めたりはしてない。  彼女達がその跡をのこして帰っていくのを見たけれど。  そして終わった後だけ、弟が離れてしまうまでの、自分のベッドに帰るまでの時間、弟の髪をなで、優しくキスをした。  終わったら自分のベッドに帰る。  これは絶対のルールだった。   行ってしまう身体が切なかった。  夜だけだ。  二人きりの夜だけだ。  ・・・・・・愛していたのだ。    分かっていた。  大学を卒業してからはさすがに同じマンションの部屋ではなく、上と下の階で暮らした。  そして、父親の会社の中で競いあった。  暴力や犯罪はないという意味、ギリギリでやりあった。  憎み合っている。  周りはそう思っていた。  どうだろう。  軍鶏だ。  闘鶏の軍鶏みたいなものだ。  本能と、そう望まれ育てられたから、別に特別な憎しみなどない。  やるべきことをやっているだけだ。  そして、前程ではなくても、夜は繋がりあった。  いつも同じ。  連絡がある。  そして、その夜弟が訪れるのだ。  弟の上にのしかかり、いつも弟が小さく震える。   それが始まり。  傲慢で残酷な可愛い弟。   綺麗な女を取り替え遊ぶ弟。  取り巻きを引き連れ、周りの人間を支配している弟。      誰も知らない。   胸を愛してやれば、それだで達して、後ろに挿れてやれば、声を上げて乱れるなんて。  鍛え上げられた身体が、私の下でしなう。  突き上げる度に膨らむ性器。  先から零してふるえている。  私の背中に回された腕も。  この時だけは囁く。    可愛い  可愛い  と  弟が舌を欲しがり舌を伸ばす。  それを吸ってやる。  絡ませあう。    弟は私をほしがった。  舌も、性器も何もかも。  与えた。  私だけだ。  私だけの弟だ。  なんて可愛い。  でも、互いに達した後、優しく手足を絡まらせながらキスをしても、終われば帰ってしまうのだ。  シャワーを浴びて、言葉さえなく。    でも、愛していた。  愛していたのだ。  だから。  なんとかしてみようとはしたのだ。  父親の会社を辞めた。  弟と争うことをやめたなら、弟は昼に私を訪れてくれるだろうか。  そう思った。    父は激怒したし、母は泣いた。  だが、構わなかった。  私は実父が残した財産で新しい事業を興した。  彼女とも別れた。  弟は前程ではなくても、新しく越してきた小さな部屋を訪れた。  連絡があり、朝までに帰る。  私は待った。  待った。  弟が昼にきてくれることを。  でも、いわなかった  弟が苦しんでいるのはわかったからだ。  すがりつき泣くのは快楽のためだけじゃない、と。  待つことはつらくなかった。  何故なら、愛していたから。    仕事は思いの外上手くいった。    父ほどではないが、特殊な分野で成功していた。  特殊だから、ほぼ独占状態だった。  ある日、思いつめた顔で弟が昼にやってきた。    事業を譲って欲しい。と。  父からの差し金だとすぐわかった。  あの父か私を許すはずがない。  弟に私の事業を奪えと命じたのだ。  根こそぎ残酷に、と。  いつもなら弟はそうしてきただろう。  でも、弟には出来なかった。  何故なら私は勝負を降りたから。  そして、その理由も分かっていたから。  でも弟は降りれなかった。  でもそこにいる以上・・・そうしなければならなかった。  でも出来なかった。  だから来た。  昼に私の元へ。  弟は私の前で泣いた。  セックスで泣かせる以外でこの男が泣くことは有り得ない。  私は弟を抱きしめた。  ベッド以外で抱き締めたことはない。  「・・・無理なんだな、お前には」  私は囁いた。  弟には無理なのだ。  来てはくれないのだ。  そこで、強くて残酷で、傲慢な王様でいつづけるのだ。  私を選べなかったのだ。  「いいよ。全部やる」  私は愛する男に持ってるものの全てを与えた。  弟は私に跪いた。   私の手をにぎり、その指の一つ一つにキスをした。  涙が指に落ちる。  愛しているのだ、私を。  でも、愛することは出来ないのだ。  何一つ捨て去れないから。  言葉にすることさえ出来ない。    本当に欲しいものを手に入れることもできないのに、そこから抜け出すことも出来ない。  弟は私の手を頬に押し当て、号泣した。  昼の光の中で過ごしたかった。  締め切った二人だけの部屋ではなく、ただ散歩したり、食事を作り合い、生活している毎日が。  キスして目覚め、夜は抱き合う。  そんな毎日が。  お前には無理か。  無理なのだな。  私も泣いていた。  思い出した。  母親達は夜私たちの部屋を訪れることはなかった。  父親がどちらかの部屋、もしくは、違う女の部屋にいたからこそ。    母親達は嫉妬に身を焼き、子供達を忘れ去った。  日中は世話する人がいてくれても、夜は孤独に朝を待つ。  階下ではドロドロした憎しみが満ちていたから、部屋の外へ出ることもできない。    私は夜が怖かった。  そして、その夜ドアが開いて弟が来た。  難しい顔をして。  それがおかしくて笑った。  弟はさらに難しい顔をした。  そして、私のベッドに黙って潜り込んできた。  嵐の夜で、雷が鳴っていた。  雷が鳴るとその身体がふるえた  だから抱き締めた。  私も怖かったから。  弟は初めて抱き締めた時も小さく震えた。  私達は抱き合った。  ただ、抱き合い、嵐が去るのを待った。  それが・・・初めての夜だった。  嵐が去ると黙って弟は出て行った。  寂しい、と思った。   また来て欲しい、と思った。  そして、私達の夜は始まったのだ。  でも、でも。  もう終わる。  父は私を消し去りたい。  弟はそれに逆らえない。    もう、夜だけの弟すら私にはない。  「抱いてくれ」  誇り高い王様が、跪いて哀願する。  私は涙を流しながら頷く。  そして、その日弟は朝まで私の部屋にいた。  出て行ったのは私だった。    弟の身体中に印をつけた。   咬んで吸って。  首筋に歯を立てて血を滲ませた。  乱暴に抱かれるのが好きな弟を、それなりに酷くは抱いてきたが、跡を残すようなことはしたことがなかった。  両手を縛り、背後から犯した。  性器をも縛り、達することを許さないで。  弟は泣き叫ぶ。  際限なくイかせた。  出せなくても弟はイける。  ガチガチに硬くなったままの性器を擦ってやれば、射精することが出来ない辛さに、身体をしならせるが、締め付けるそこがイっていることを教えてくれる。  中だけでイかせる。  出させて。  ゆるして  弟は許しを請う  本当に許して欲しいことは何なのか。  私は苦く笑う。  恋人を罰していた。  弟が恋人だった。    だから許さない。  縛られ血管が浮き上がった性器を扱きながら、後ろの穴を執拗に突いた。  鍛え上げられた身体が、女のように感じて震える。  可哀想に。  プライドの高い弟は、もう二度とこの快楽を味わえない。  弟は男に犯されるなんて受け入れない。  受け入れられない。  それを認めることさえ出来たなら、私を手放すことなどしなかった。    「大好きなくせに・・・男に奥まで犯されるて、女みたいにイくのが」  私は囁く。  弟のハンサムな男らしい顔が歪む。  なんて可愛い。  子供のようにすすりなく。  これが大好きだから。    髪を掴んで犯した。  乱暴に道具のように。    それは弟を解放してやることだから。  支配者でなければならない弟が、そこから逃げられるのはこの時だけだから。  奥に放つ。     もうパンパンな性器に触れてまた泣かせ、でも開放してやらない。  そして弟に命令する。    「しゃぶれ」と。  弟は両手をしばられたまま、芋虫のやうに蠢き、私のモノをへ這ってきた。  そして、私の股間に顔をうずめて、必死でしゃぶる。  頭を掴んで喉の奥を犯した。  弟の苦しむ声を愛しく思った。    「変態、虐められるのが好きな淫乱」  弟を罵る。   弟は泣きながらそんな行為に感じる。  ここまでしたことはなかった。  でも、知ってた。  弟が高慢な彼女達にしていたこと。  でも、それは。  自分がそうされたかったんだろう。    可哀想な可哀想な弟。    罰を欲しがっていた。  もっと、もっと、と。  弟の背中を焼いた。  タバコを押し当てて。  焼きながら、腰を打ちつける。  弟は叫び、それでも縛られたままの性器は硬くそそり立ったままだ。  焼きながら腰を使う。  弟の中は蠢き、暖かく、締め付ける。  初めての日のようにキツく締め付けてきて、思い出して泣いた。  沢山の私の痕を背中につけてから、弟の性器をほどいてやった。  うぉぉつっっ!!  弟は吠えながらイった。  よだれをたれながし、身体を震わせて。  私もその締め付けでイった。  イっている最中にまた動きだした。  弟が無理だ、ゆるしてくれ  そう叫ぶ。  許すわけがない。    許して許して・・・  泣き叫ぶ弟を泣きながら犯しつづけた。  許さない。  許せるものか。  一緒に生きていきたかったのだ。  私は泣いた。  殺して自分のものにしたかった。  初めて抱き締めた夜も。  初めて抱いた夜も。  一度だって自分のものになんかできなかったのだ。  だってお前は。  お前は。  自分にすらなれないんだから。    私が愛したお前を、お前が認めなかったんだ。  首を締めながら腰を打ちつけた。  目を充血させ、身体を痙攣させ、弟はそれでもイった。  殺せなかった弟の上で、意識を無くした弟の上て私は声を上げて泣いた。  でも、それでも、止めることなど出来なかった。  動かなくなった身体を、犯し続けた。  翌朝、ベッドに弟を残したまま、私が部屋を出て行った。  必要なものはもうなにもなかった。  実父が残してくれたもう一つの財産。  山中の別荘へむかった。  この世界にもう・・・用はなかった。    山で暮らして三年。  そして、彼に出会ったのだ。  愛した。  一目で愛した。  人間でないからこそ。  弟を愛した。  それと同じ位憎んだ。  でも、彼なら憎まないで済むとわかった。  彼はいない。  最初からいない。  あの意味もなく争う世界には。    村で集めた情報を元に彼を探した。  時間はある。  ここで引きこもって生きていくだけの金はある。  渡した事業と引き換えに弟が送ってくる金で十分すぎるほどだ。  もっと少なくても良かったが、弟は譲らなかった。  もっとも、全て弁護士を通じてだ。  あの夜が最後だった。  「愛してる」さえ言わないままの夜。  今も弟は傲慢で残酷な王様として君臨しているのだろう。  弟は父を倒す。  それは間違いない。  弟が父に逆らえなかったのは・・・今逆らったなら、父を倒せなくなるからた。  父の王国を乗っ取り、弟は父より狂った王になる。  父より狂った支配をするだろう。  そして、女を責めて泣き叫ばすのか。  それとも、男か。   でも、本当にそうされたいのは自分なくせに。  哀れな弟。  その欲望はもう満たされることはない。  私は弟のことを考えることをやめた。  止めれるようになったのは、彼を見た日からだった。  それまで、それでも弟のことを思って一人夜には自分を慰めてしまっていた。  でも、今。  欲しい。  彼が欲しい。  それは、救いのようだった。  この世界に欲しいものがあるなんて。  いや、この世界ではないから欲しいのか。  どちらにしろ、もう止まるつもりはなかった。

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