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第2話
山の地形図を取り出す。
彼を発見した場所に印をつけた。
そして目撃情報のあった場所。
彼が生き物であるなら、どこかに定住している可能性が高い。
妖精?
呼び方は何でもいい。
非常に長命だとしても(少なくとも彼は500年以上は存在している)生物の形を取っている以上、それなりに制約があるはずだ。
地形図は正確とは言えなかったが、目安にはなる。
地形図は狩猟が趣味だった実父のものだ。
引きこもってからは、山の中を父のつけた地図の印を目当てに歩き回るようになった。
山に入って帰れななりかけて焦ることもあったが、この三年でかなり山には詳しくなった。
勿論、山の奥までは入っていない。
本当の奥には父も行ってない。
村の人間もこの山にははいりたがらない。
だが、私が彼を見かけたより向こう、そこに彼はいるのだ。
目撃情報も、私が彼を見かけた辺りだ。
そこまで行けば
山犬もいるという。
生き物であるなら。
水が必要だ。
生き物は河辺に住むし、人間に近いなら小屋のようなものを作っている可能性がたかい。
目撃情報も、私の見た場所も・・・川の近くだった。
彼に会いに行こう。
彼がいい。
彼でないと。
もうそれしか考えられなかった。
彼を捕まえる。
彼は逃げるから。
まずは捕まえて・・・とにかく・・・。
話がしたい。
捜索して一週間になる。
彼は人間となれ合うことはないと村人は言った。
やはり、人間では踏み込むことも恐ろしい山の中だ。
彼が住む気配すら見つけることは難しい。
彼に助けられた人間の話はあったし、村にまだ存命のものもいたが、誰も彼と話したモノはいなかった。
ただ、木の実などの食料が、迷い疲れて寝ている間にそっと置かれてあって、気配に目覚めると、足音もなく人間ではない跳躍で森へ消える彼を見たのだと。
そして、山犬が現れた。
めったに人間の前に姿を表さない山犬をみるときは、とても危険なので固まっていると襲ってくる気配はなく、何度も振り返るようにして歩いていく。
ついてこいと言うことか、とついて行くと、村への道に出た、などと云う話がいくつか残っていた。
山犬。
彼らが彼の友達なのか。
人間以外を好む彼が好きになる。
話をもう一度、思い出していく。
そして、彼が銃を嫌った、という話も。
彼と出会ったことのある者の一人は銃を持っていたらしい。
この村人はもう亡くなっていた。
猟で遅くなって帰りそこね、山に泊まったのだという。
火を焚き夜を明かした。
ふと枕代わりにしていた銃が消えているのがわかった。
慌てると、人間ではない生き物が銃を川の淵に投げ込んでいるのが見えた、と。
滝になってる淵だから、銃はとりかえせなかったと。
何故人間ではないかと思ったか。
それは、銃を持つ彼の手から煙がでていて肉が焼ける匂いがしたからだ、と
あの生き物は鉄が嫌いなのだと。
銃を持っている間、涙をながし、動きも鈍かった。
まるで、もっと重い鉄の塊を持っているかのようだったと。
銃を捨てた瞬間、一躍で森に消えた、と。
彼は銃を嫌う。
そして、恐らく鉄が苦手なのだ。
・・・・・・仕方なかった。
彼を捕まえる方法を考えなおした。
仕方なかったのだ。
昼、山の中で派手に猟銃を撃った。
このためだけだけに村で亡くなった実父の猟銃をメンテしてもらい、扱い方を習った。
もちろん、彼に教えるためだけだ。
ここに銃を持った人間がいる、と。
何かを撃つ気はない。
私には動物を意味もなく撃つ趣味などない。
そして、滝の淵のそばで、銃を枕にして、火を焚き眠ったふりをした。
彼を待った。
誰かがくることを待つのはひさしぶりで、ふと弟のことを思った。
夜弟が扉を開けてやってくる時は、胸の奥が痛んだのだ。
嬉しくて。
でも、あれは同時に秘密だった。
誰にも言えない、言ってはいけない、闇だった。
これは違う。
足音はほとんどしなかった。
でも、気配がした。
タイミングを間違ってはいけない。
薄目をあけて、彼の指が銃を掴む瞬間を待った。
焼かれることを恐れたのか、彼の指が躊躇して止まったのが幸いだった。
カシャン私は彼の手首に手錠をかけた。
彼は驚き、そして傷みに叫んだ。
手錠は彼の手首を焼いた。
私は慌てて飛び起き、彼の反対側の手にも手錠をかけた。
また焼けて彼は叫んだ。
慌ててハンカチを巻きつけ、彼の手首と手錠が直接触れ合わないようにした。
彼はヨロヨロと立ち上がった。
身体が酷く重いらしく、あの跳躍はない。
抱き締めて逃がさない。
可哀想だった。
こんなことはしたくなかった。
でも、こうしなければ、彼に会えなかったのだ。
「にげないで・・・」
私は暴れる彼をだきしめる。
彼は力なく腕の中でもがく。
やはり、鉄が苦手なのだ。
でも、腕の中の彼を見てしまった。
彼はとても美しい。
暗闇に光る目も。
美しい輪郭をもつその相貌も。
広く開いた服の胸元から、胸に触れてしまったのは、綺麗すぎる顔立ちから、もしかしたら女性なのかもしれないとおもったからだ。
粗い植物の繊維で織られたその簡単な布地の下にある胸はしなやかな筋肉と、2つの粒があった。
男性の胸だ。
腕の中の彼が、身体に触れられ怯えて、知らない言葉を叫んだ。
「怖がらないで・・・と言っても怖いよな」
私は溜め息をつく。
でも、もう離したくなかった。
離せない。
腕の中の彼が・・・欲しかった。
触れた胸の粒を唇で吸いたかった。
唇で挟み、舌でころがしたかった。
彼は美しい。
本当に美しい。
何より、本当に人間ではない。
人間の外にいるモノだ。
汚れていない。
もがく彼を抱きしめていた。
逃げようとする彼の腰に硬くなったものを押し当ててしまう。
彼はそれを怖がって泣く。
でも、離してやれない。
このやり方は間違っている。
でも、他にどうすれば?
彼は最初から人間を拒否しているのだ。
少なくとも数百年は。
「こわがらないでくれ」
必死で訴えた。
その時低い唸り声がした。
自分と彼が野犬に囲まれていることを悟る。
彼の友達が彼を迎えに来たのだ。
当然だろう。
彼らのために彼は銃を棄てているのだから。
だけど、申し訳ないが、殺されるわけにはいかない。
私は力無く暴れる彼を肩に担ぎ、デタラメに猟銃を撃った。
当たる訳がない。
ハッタリのつもりだった。
キャン
鳴き声が上がり、一匹倒れた。
まさか、当たった。
肩の上で彼が泣きながら叫んだ。
倒れた山犬が起き上がったので、私はホッとしたが、かすったのか脚を引きずっている。
肩の上で彼が叫んだ。
その声の悲痛さに私は胸が苦しくなった。
山犬達はその言葉を聞き取り、後ずさる。
彼が私の身体を力無く叩いた。
銃を下ろしてその顔を覗きこむと、泣きながら、山犬達を指差した。
そして、大人しく身体を私に預けた。
「撃つな。一緒に行くから」
そう言っているのだと。
胸が痛い。
胸が痛い。
こんなに綺麗な目をしてそんなことを言う彼を連れて行くなんて。
でも、私は。
そうしたのだ。
彼を担いで小屋まで向かう間、人間が立ち寄る場所のギリギリまでは・・・山犬達がついてきた。
山犬達の憎しみの目を当然だと思った。
山小屋で彼をベッドに横たえた。
彼は抵抗しなかった。
ただ泣いていた。
撃たれた山犬のことを考えているのか。
その涙を指で拭う。
手錠を外してやりたかったが、外した瞬間逃げてしまう。
だから手錠を繋ぐ鎖を切って、手は動けるようにした。
鉄は実際の重さとは違う効果を彼に与えるらしい。
ヨロヨロとしかうごけないから。
そして、手錠と皮膚が触れないように、布地で手錠を綺麗に巻いた。
火傷はもう良くなってきていて、彼が人間じゃないことを実感させられた。
「ごめん。本当にごめん」
私は謝り、彼を抱き起こした。
そして、彼にコップに入った水を渡す。
彼は大人しく受け取り、一口のんで力無く、コップを膝の上に置く。
諦めたようなその瞳に悲しくなる。
私のせいなのだけど。
でも、でも・・・。
「どうすれば良かった?」
苦しくなって吐き出してしまう。
一番よいのは彼に一切関わらないことだった。
彼はのぞんでなかったからだ。
でも、それは出来なかったのだ。
「すまない・・・すまない・・すまない」
私は彼を抱きしめながら泣いた。
でも。
離してやれない。
自分の中の狂気に怯えた。
弟でさえ手放せた。
それが弟の望みだったから。
でも、何故か彼だと出来ない。
出来ないんだ。
彼は差し出した木の実も少し食べた。
諦めたように大人しい。
でも、私と目をあわせようともしない。
ヨロヨロと立ち上がろうとしたから、察してトイレへ連れて行った。
すべてが無抵抗だった。
トイレに座らせても。
後始末をしても。
力無く、前を剥いたまま。
ベッドに横たわり、天井をみつめていた。
見かねて、口移しで水と、パンを与えた。
それさえ拒否しなかった。
苦しい。
苦しい。
やはり、放してやるべきなのだ。
分かっているのだ。
人間は汚いから彼に恋した。
でも、こんなところに無理やり閉じ込めるのは、それこそ人間のすることで、だから私が一番残酷な人間なのだ。
彼の髪に触れた。
彼は無抵抗だった。
彼の唇に触れた。
その唇をなぞる。
無抵抗。
最低だと思った。
でも、止められなかった。
彼の服を脱がせた。
荒い織物の生地の布の下は素肌しかなかった。
滑らかな皮膚としなやかな筋肉。
弟のようにトレーニングで鍛え上げられたものではない、自然で、美しい身体。
美しい性器も人間に似ていた。
触れたかった。
ただ、触れたかった。
彼にのしかかっていた。
彼か初めて反応らしい反応をみせた。
震えたのだ。
その震えは私をおかしくした。
弟は震えた。
何時でも、私がのしかかると。
彼は初めて怯えた目をした。
それは、初めて弟の中に挿れた夜、弟がした表情と同じだった。
胸が痛い。
胸の奥の奥が。
「好きなんだ」
私は誰に向かっていったのだろう。
彼の唇を塞いでいた。
唇を舌で割り、おびえる舌を引きずり出した。
舌を絡ませる。
彼は甘い。
あまりにも甘い。
夢中になった。
その舌を口内を貪りながら、胸をなで、その粒に触れる。
指先でそこをなぞる。
彼の身体がビクンと震えた。
唇を離す。
彼が息をぜいぜいさせ、恐怖よりは戸惑った目で私を見上げる。
でも、胸の粒を指先でつぶしてやると、また身体をふるわせ、小さな声を上げた。
でも、その目はわからないと言っていた。
知らないのだ。
何も。
ずっと一人だったのだ。
山犬達といるから、動物がつがう様子位は知っているだろう。
でも、それを自分と結びつけたことはおそらく・・・なかったのだ。
私だけなのだ。
こうやって彼に触れるのは。
それに歓喜した。
胸を舐めた。
彼が声を上げる。
不思議そうな顔。
これの意味もわからない。
吸ってやる。
身体が震えて、性器が膨らんでいく。
その性器を扱いてやった。
それは知っていたらしい。
その目かそう言っていた。
その行為の意味は分からなくても。
でも、彼はこの指を拒否はしなかった。
それに調子にのった。
胸のすっかり立ち上がった粒を噛みなめながら、性器を扱いた。
彼は喘ぐ。
人の手でされる良さを教える。
胸で感じる甘さも。
声を殺すことさえ知らない彼は、些細な刺激にさえ感じて、喘ぎ声をあげる。
知らない言葉が混ざる。
遠いむかし。
はるか昔に、少なくとも語りあった仲間はいたのだ。
どうして、一人に?
そして、身体の交わりも知らないままで。
でも、何も知らない彼に触れられることに歓喜した。
彼は声を上げて放った。
手に着いた精液は人間のモノより、よっぽどいい味がした。
彼をがそれを舐めとる私に驚いて目を見開いたので笑ってしまった。
そう、今彼は私をみている。
驚きのあまりであっても。
もっと気持ちよくさせてあげたかった。
また性器を触っても彼は拒否らかなった。
だからそこに舌を這わせた。
また彼の目が大きく見開かれる。
口に含んだ時は、必死で頭を押しのけようとした。
食べられるとでも思ったのか。
唇と指をつかってしごき、舌で舐め、音を立てて吸った。
あっと言う間に育ち、彼は悲鳴のような声をたてて感じる。
口の中ではじけたものを飲み干した。
彼は何か怒鳴った。
身体をひくつかせ、感じながら
彼は・・・うまかった。
もう出た場所を執拗に吸い舐めた。
彼が泣きわめく。
身体を魚のように跳ねさせて。
でも・・・彼が泣くから・・・、それまでにした。
一緒に握ってこすり、達しはしたが。
でも、彼は珍しそうに私の服を脱いだ身体を見た。
自分と同じモノに関心をもったようだった。
握り一緒に、にぎりこすり合わせたなら、声を上げたけれど、口でした時の怖さはないようだった。
彼が達したのを確認してから私も達した。
彼を抱きしめて囁いた。
「愛してる」
誰にも言ったことのない言葉だった。
弟にさえ。
風呂に入れる時も彼は少し暴れた。
お湯に入る習慣がないのだろう。
彼は清潔だったからおそらくあの冷たい水にはいっていたのだろう。
でも、夏でも冷たいあの水にはいれるのはやはり、人間ではない。
でも一緒に抱いてはいってみたら、大人しくはなった。
髪を洗い、身体を洗う時も抵抗はしなかった。
諦めていたんだろう。
ただ、後ろの穴や性器な乳首を執拗に触ってしまったのは事実だ。
風呂でまた彼と自分のをこすり合わせても、彼は喘ぎ、感じはしても、抵抗はしなかった。
水を与えたら、自分で飲んだし、木の実もパンも食べた。
パン以外は加工された食品は食べない。
まさかとおもって生肉を出してみると、彼は喜んで食べた。
山犬と一緒にいる理由はここもあるのかもしれない。
その目を覗きこむ。
何の感情もみせない。
スイッチをきっているのだ。
今は逃げられないから。
中に入り込み、待っているのだ。
逃げる時を。
彼に私が与えるものは何の意味もない。
人間が持つものに何の価値もない。
だから。
だから。
彼は美しかった。
そして、私の愛は有害であって無価値であることも分かっていて、それでも、彼を放してやれない自分が嫌だった。
抱きしめて寝た。
彼は嫌がらなかった。
彼は山犬達を抱きしめて寝てたのだ、きっと。
裸のまま、抱き合って眠った。
彼は、暖かかった。
愛する人を抱いたまま、朝まで眠るのは初めてだった。
弟と過ごした最後の夜でさえ、ただ苛烈に責めていただけだったから。
「ごめん。ごめん。許してくれ」
私は囁く。
彼は仲間が傷付けられることに耐えられないほど優しいのに、私はどうなんだ。
閉じ込めて、泣かせて。
でも、放せない。
放せないから・・・。
髪を撫でながら彼の肉体を感じていた。
体温は人間より少し高い。
感じた時は、もっと熱くなる。
彼の中の熱さはきっと・・・。
硬くなったが我慢した。
彼は寝息を立てている。
安心しているからじゃない。
生き残るための防御反応だ。
スイッチを切り、備えているだけだ。
彼は逃げない。
何故なら手錠を外せるのが私だけだと知ってるから。
手錠がある限り、思うように動けないなら・・・彼は彼の世界で生きていけないから。
私は翼を奪われた天女を思った。
翼を置いて地上で水浴びしていると、彼女に恋した男がその翼を隠し、天女に結婚を迫る話だ。
天女は翼のために男と結婚し、男との間に子供を為す。
もう、逃げないだろうと、翼を返した男と子供を置いて、天女は天に帰ってしまう話だ。
私も翼をもいだ。
でも、私は翼を返してやれない。
だって君がかえってしまうのを知っているから。
私は泣いた。
どこへも行けないんだ。
どうやっても人間であることも止めれないんだ。
君の世界へもいけないんだ。
でも、君が好きなんだ。
私は彼の頭にキスして、泣きながら眠った。
数日たった。
2つある布で巻いた手錠の一つは外した。
彼は普通程度には歩けるようになった。
少なくとも、あの跳躍はできない。
私達のように重力に縛られている。
彼は大人しく、されるがままになっている。
部屋を珍しげに歩いて見てまわりはじめもした。
キスしても嫌がらない。
舌を絡ましてやると、応えはしなくても抵抗しないし、甘く吸って、舌を噛めばそこを勃ちあがらせるようになってきた。
彼の身体は可哀想なほど快楽に弱かった。
山犬達との接触しか知らない身体は簡単に人の手に、感じて、喘ぎ乱れた。
もう、口で彼の性器を愛しても嫌がらない。
腰を淫らに動かし、私の舌や口を受け入れ、私の口の中に放つ。
受け身ではあっても、彼の身体は快楽を否定することすら知らなかった。
穴を舐められる事も、そこで感じることも受け入れ、身体を震わせる。
指を挿れた時は怯えて泣いたが、そこで感じることを知ってからは、指を腰を揺らして受け入れるようになった。
指でイかせる。
そこをこすって。
覚えの良い彼は、すぐに後ろでイケるようになったのだ。
「愛してる」
囁く。
彼には意味がなくても。
こんな酷いことをしている愛など愛じゃないのに。
ああっ
ああっ
彼が中を指で捏ねられ、そこを擦られ声をあげる。
パンパンに膨らんだ性器を口に含み、しごき上げながら、中も指で擦りあげる。
んっ
んっ
彼の腰が淫らに揺れる。
私の髪を、かれの指が掴む。
ただ、快楽からすがりたくてそうしているだけでも、私は喜んでしまう。
中と性器を同時に刺激され、彼は叫びながら口の中に放った。
全部飲む。
腰を捻って逃げようとする身体を押さえつけて、達したばかりのそこを、絞るようにのみつくす。
この頃にはもう、彼は泣いている。
でも、拒否はしない。
行為の意味がわからなくても、快楽は受け入れてくれているのだ。
私は彼をうつ伏せにした。
腰を持ち上げ、舌で彼の精液で丹念に濡らした。
もう、我慢出来なかった。
すっかり熱くなった彼の身体。
人間より熱い体温。
彼の中に入りたかった。
彼は多分、この行為の意味もわからない。
でも、もう、彼が欲しかった。
異変を感じて逃げる身体を押さえつけて、押し入った。
悲鳴をあげた。
可哀想だ、そう思った。
でも、逃げようとシーツを掻く手をおさえつけ、ゆっくりと入っていく。
キツ過ぎた。
宥めるように性器を扱く。
快楽を覚えるのが上手な身体が、そこへの快楽を追い始める。
力の抜けたところでさらにおしいった。
彼の悲鳴は力なかった。
可哀想だ。
可哀想だ。
何も知らないのに。
おそらく愛も恋も知らないし、要らない。
彼に必要なのは、決して仲間を裏切らない山犬達との友情だけなのだ。
可哀想だ。
私などいらないのに、可哀想だ。
でも、なんて、熱いんだ彼の中は。
そして甘い。
絡みつくそこで、動かないでいるのは辛かった。
でも、彼が馴染むまで待った。
力無いすすり泣きに胸が痛んだ。
背中から抱きしめ、布団に顔をこすりつけて泣いている彼をこちらに向かせ、キスをした。
舌を絡めて、落ち着くように。
萎えてしまった性器を、指で扱きながら。
身体の強張りが溶けてきたところで、動きだす。
ゆっくり
ゆっくり
そう必死で念じなければならなかった。
彼は熱くてそこはもう、甘くて熱いシロップを満たした壺のようで、蠢いてしめつけて・・・。
何度も呻いてしまうほどだった。
でも、彼は泣いていた。
言葉はわからないけれど、痛いと言っているのはわかった。
だから、そこを突いた。
気持ち良いように。
もう、指で良さを教えたその場所を。
彼が身体を跳ねさせた。
驚いたように。
萎えていた性器が、力をとりもどす。
ああ、感じてくれている。
私はそこを、こする。
彼が喉をそらし、涎を流した。
「良かった・・・もう苦しくない?」
そうささやいて、彼の口の中に指を入れたなら、訳が分からなくなった彼が、指を噛む。
痛み、血が滲んだが、かまわない。
大きく動いた。
たまらなく気持ちがいい。
彼がシーツを、つかみ、背中をそらし、叫んだ。
ああ、感じてる。
中がしめつけて教えてくれる。
言葉を叫ぶ。
それが助けを求める言葉なのはわかる。
誰に?
何に?
それにさえ嫉妬する。
私ではないからだ。
大きく動く。
全部擦り、その中を裏返すように。
めくりあげ、擦りたてた。
彼が泣く。
可哀想でたまらない。
翼をもがれて、悪魔に犯されている。
可哀想だ。
可哀想で、すまなくて、でもやめられなかった。
堪らなく気持ち良かった。
突き立てる。
彼の手足をもがくよう。
彼の声は声にならない。
私は泣いてしまう胸が痛くて。
「ごめん・・・ごめん・・・」
何度もあやまる。
でも、深く抉った。
彼の心臓をつかみ出すよう。
彼は枕を噛んだ。
快楽も痛みも、彼には恐ろしいだけなのに。
熱く溶かされ、我慢できそうにないが耐えた。
せめて、彼を連れて行きまかった。
いきつけるところまで。
望んでなくても。
彼の身体が痙攣し、中が締め付けられた。
叫びなから、達した。
その締めつけの中で私も放った。
彼は気を失っていた。
可哀想で愛しくて、自己嫌悪にまみれ、でも。
信じられない位、気持ち良かった。
気絶した彼を風呂に連れて行きその身体を清めた。
汚してしまったことを謝りながら。
人間がこんなことをしてもいい存在じゃないのに。
それでも、掻き出す精液に満足している自分がいた。
この身体の奥に押し入ったことに満足している自分がいた。
だって、心に入れてもらえないから。
そして、なお収まらない欲望。
彼の顔を見ながら自分で扱いた。
それでも、彼を抱きしめて寝たら、硬くなってしまう。
でも、耐えた。
泣きはらした顔に胸が痛い。
辛い。
幸せだ。
自分を嫌悪する。
愛しい。
感情が溢れすぎてわからない。
泣いてしまった。
何も。
何も。
してやれない。
奪うだけで。
また泣く。
正しいことは何なのかわかっているのに。
でも。
でも、それは出来なかった。
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