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しあわせのかたち

 週に一度、天気のいい日を見計らって仕事が終わってから、地元でデートスポットになっている海辺に行くことが、いつの間にかふたりの習慣となっていた。勤めてる運送会社の上司小林が、4ヵ月前にいきなり告白してきた場所でもある。  バツイチで35歳、前妻との間に娘のいる男との恋愛――竜馬に戸惑いがないと言えば嘘になる。それでも小林の持つ情熱と包み込むような優しさに惹かれ、めでたく恋人になった。  同性との付き合いがはじめてな自分だからこそ、一回り年上の彼がリードするかと思いきや、持ち前の優しさを変なところで発揮するせいで、上手くいかないことが時折あった。  一番記憶に残っているのはとんとん拍子で初夜を迎え、さあこれからってときに、小林がビビって手を出すのを戸惑ったこと。予想を裏切らない行動に竜馬は半分呆れ返り、苛立ちながら押し倒した。  すると目を白黒させ、慌てふためきながらも口を開く。 『おっ、お前みたいな奴にヤられるほど、落ちぶれちゃいないんだからな!』  なぁんて若干震えるような大きい声で言い放つと肩を掴み、力いっぱいに押し返してきた勢いで、竜馬の後頭部をフローリングの床に強打させた。その衝撃で、目から星が出るくらいに。  会社では落ち着き払って仕事を完璧にこなす小林が、やらかしてしまった目の前の惨状にひどく動揺している様子は、腹立たしさを通り越して愛おしさが募るものだった。自分だけに見せるその顔が、可愛くて仕方なくて――  そんな笑うに笑えないハプニングがあっても、めでたくひとつになることができて、忘れられない夜になった。  ふたりで過ごす何げないしあわせを感じられる日々が、これから先もずっと続いていくんだろうなぁと、夕日に赤く染められる海を見ながら竜馬は噛みしめた。

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