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しあわせのかたち2

 胸の中にほっこりとした想いを抱えながら隣にいる小林を横目で見たら、煙草をくわえたままポケットに手を突っ込んだり出したりを繰り返し、なぜだか落ち着きのない様子だった。 「小林さん、煙草危なくないですか?」  竜馬がそわそわしている小林に声をかけたら、びくっと体を震わせるリアクションをした後、慌てて口から煙草を外した。 「綺麗な夕焼けに心を奪われて、ぼんやりしてしまった……」  そんならしくない言い訳を口にし、ポケットから携帯灰皿を取り出して吸殻を押し込む恋人の姿を、小首を傾げながら眺めた。  まじまじとその様子を窺いつつ、内勤の事務のおばさんが言ってたことを思い出す。月末だから忙しいわと、昼食を食べに戻った竜馬に沈んだ声で零していた。  盆暮れ正月や月にある記念日がなければ、ドライバーとしての自分の仕事はいつも通りなれど、事務処理を伴う仕事となればまた変わる。事務のおばさん同様に、小林だって忙しいはずだ。  そんな配慮をせず、ただ天気がいいからという理由だけで、ここへと誘ってしまった――相当疲れが溜まっているのか、小林の目の下にクマが薄っすらあることに今更ながら気がついた。 「自分から誘っておいて悪いんだけど、もう帰ろう」 「は? 何言ってんだお前。来たばっかりなのに」 「そうなんだけどさ。夕飯の献立を考えてたら時間がかかりそうなものになりそうで、待ってる間に小林さんがお腹を空かせて、身悶えちゃうかもしれない」  とってつけた言葉に白い歯を見せながら大笑いし、小林よりも少しだけ背の低い竜馬の頭を、宥めるように撫でてきた。  何かあるとまずは頭を撫でるのが癖なのが分かり、優しい掌で長く触れられていたいと考え、少しだけ髪を伸ばしていた。たかが数ミリされど数ミリの長さなれど、こうして触れられるだけで、胸中に甘い疼きを感じずにはいられない。

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