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プロローグ1
リビングの机の上に広げられた皺ひとつない紙をじっと見つめる。
世界の人口の大半はβによって構成され、数少ないαによって支配されている。その最下層に位置するのは、極一部のΩだ。
誰もがαに憧れ、βであることに安堵し、Ωであることを疎んじた。
中学の義務教育の最終過程に、このα、β、Ωのバース性識別を血液検査によって調べることが義務化されたのは最近の事だ。
β同士の親の子どもはほぼ、βだ。しかし、極稀にαやΩが誕生することがある。αだった場合は幸運だが、逆にΩだった場合に、知らずに発情期を迎え性犯罪の被害者になる事件が多発したことが原因だ。
Ωは三か月に一度、ヒートという発情期を迎える。それはΩ特有のもので、『抑制剤』で制御するか、特定のαと番になる以外に抑える方法は無い。
そんなことは知っている。
義務教育はとっくに終わっている。
両親は間違いなくβ同士で、親戚にもΩはいない。
世界には6種類もの性が混在しているが、αもΩもその数は少なく、αに出会って番になれたΩは恵まれている。
発情期に発せるフェロモンは時にβさえも誘惑してしまう。上流階級に君臨するαでさえもそのフェロモンに屈してしまうほどだ。発情期による事故でうっかり番にされ、捨てられたΩだっている。Ωから番を解消する術は無く、αから一方的に解除されれば身体だけでなく、精神も壊れてしまうΩも少なくない。
『番契約』なんて闇契約もあって、上流階級のαにΩが大金を払って番にしてもらうという噂もある。男同士でも女同士でも性別に関係なく子どもを宿すことができる。αとΩの子どもはαかΩしか産まれない。αに買われてαの子どもを産んで捨てられるΩだっている。Ωは厳しい現実の中を生きていくしかないのだ。
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