5 / 5
第5話
がさごそと衣擦れの音でリョウが目を覚ますと、アヤが財布とキーを持って出かけようとしていた。
「どこ行くん?」
「煙草切れたからコンビニ」
「俺も行く!」
「何考えてるんだよ無理に決まってるだろ」
「ほらそこ、そこに入れて」
リョウがそこ、と指さすのはアヤのワイシャツの胸ポケット。
「なんか昔そんなドラマあったやん?なあ連れてってえなあ~」
気が進まないながらも試しにリョウをポケットに入れてみると……
「わあ!ぴったり!楽し~!」
とてつもなく可愛い。ポケットからひょっこり顔を出すそのさまも、大はしゃぎの様子も。
おそるおそる、外へ出る。マンションの廊下、エレベーターを過ぎれば、頭もポケットの中にしまいこむ。
外の景色を見ることができないのは残念だが、またとない貴重な体験にリョウはワクワクが止まらない。アヤが歩くたびに大きく上下に震動し、少し酔いそうにもなるが、胸からはアヤの体温を感じるし、すっぽり包み込まれているという感覚がなんとも心満たされる。
コンビニに到着し、品定めをするために歩みが止まる。震動していた時にはわからなかったアヤの鼓動を全身で感じ、不思議な感覚だ。
不思議と言えば、平坦なはずのアヤの胸にさっきから異物感があり、気になっていたのだが、これはもしかして――
その部分的に出っ張ったところを、窓拭きするように両手でさすってみた。
「!」
案の定、アヤの体がぴくりと揺れた。
そう、リョウが日頃からよくいじめている、アヤの敏感なところ。現在の状況のリョウから見るとそれはハンバーガーぐらいの大きさだ。
相変わらず窓拭きするように両手を上下運動させていたら、やっぱりアヤが怒りだした。
「やめろよ」
周りからは一人で来ているようにしか見えないので、ひそひそ声で制するが、リョウは周りにばれてはいけないのをいいことにスルーだ。それどころか、大きく口を開けてその出っ張りをシャツごしに口に含んだ。
「リョウって!」
アヤの体に震えが走った。リョウは楽しくて仕方がない。いくら怒ってみたところで、ここではどうすることもできない。大声で怒鳴ることも、このポケットからリョウをつまみ出すことも。
家に着くまでこうしててやろう。さっきのお返しだ。
リョウはニヤニヤしながら擦って吸っての責めを楽しんだ。
その後リョウがどうなったかは、言わずもがな、である。
ともだちにシェアしよう!