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第4話

「ひどくしてごめんね」 「うん……もうええよ」  壊れものを扱うようにそっと、リョウをベッドに置いて、アヤもその傍らに寝そべった。  普段全く気にも留めないアヤの細かいところがよく見える。リョウはすっかりあちこち見入ってしまう。決して濃くもない体毛や、毛穴まで見て取れる。そのひとつひとつすべてが愛おしいと、リョウは思った。その思いを抑えきれず、とことこと顔へ近づき、自身の背丈よりも大きな唇にくちづけた。するとアヤもお返しのキスを贈る。 「リョウがもしこのままでも、俺は今までと変わらないよ」 「でも……」 「こっちのほうが可愛いぐらいだし  その言葉にリョウは一瞬むっとしたが、すぐにまたしょげた表情に戻った。 「だって、こんな体じゃなんもできひん……」 「いやらしいこととか?」 「ちゃうわ!……そ、それもやけど……それより、掃除とか洗濯とか、買い物すら行かれへんし、全然アヤの役に立たれへんし」 「いいんじゃないの」 「なんもええことないやん、こんなんじゃ俺……」  こんな時にもリョウは自分のことよりアヤとのことばかり心配している。先にもっと困るべきことが他にあるだろうに。アヤはため息とも笑いとも取れる息を一つ吐いた。 「そんなことしてもらうために付き合ってるわけじゃないから」 「でも」 「守るから」 「え?」 「……なんでもない」  寝返りを打って背を向けてしまったアヤを、リョウはじっと見つめた。  確かに、『守る』と言ったはずだ。相変わらず言葉少なで真意がわかりづらいが、小さくなったリョウをアヤが守る、という意味なのだろうか。そんなことを言われたのは初めてで、また普段ならそんなことを言われてもさして嬉しくもないのだが、今の不安な状況にいるリョウにはこの上なく感動を与えた。 「このまんまも、悪くないかも……」  照れくさそうにぼそりと独りごちると、アヤの背中まで歩いて行って身を寄せ、そのまま眠りに落ちた。

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