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第5話

 「愛して欲しい」  長いこと思い悩んでいた少年は神に言いました。  「本当に抱いてほしい」  少年は真剣でした。  神は戸惑います。   神は愛より深く少年を愛しているのに。  少年はそれではダメだと言うのです。  「愛している」  神の言葉は本心でした。  少年は微笑みます。  「知ってる愛してくれてる。・・・でもね、僕はあなたに愛されたい。だってあなたはいつか僕を忘れてしまう。それなら僕は、あなたに愛されて死にたい。あなたは忘れてしまっても、僕は僕の死を僕が望んだモノにしたい。あなたが僕をわすれてしまっても、あなたが僕に与えた愛だけは僕だけのモノだ。あなたが他に誰を愛しても。僕を忘れても。僕の死はあなたに愛されたモノになる。それは僕だけのモノだ」  それは少年の望みでした。  神に殺されることだけを少年は願ってきたのです。  神と同じ時間を生きられず、いずれ忘れ去られることも理解して、ならば、その一瞬を受け入れたいと少年は願ったのでした。  神の愛。  貫き、喰らいつくす・・・その愛を。  神はため息をつきました。  でも、事実でした。  神は忘れてしまいます。  時間はあまりにもながく、忘却だけが神の救いでもあるのですから。  「僕を愛して、僕だけを今だけ。僕にはそれが永遠になる」  少年は神に願いました。  神は忘れることさえ恐れない少年の勇気を愛しました。  人間には受け入れがたい神の愛を受け入れる少年に歓喜しました。    愛でした。  神が人を喰うのは愛でした。    だから神は少年を愛し始めたのです。  ただ一度しか愛せない愛し方で。  優しいキスも、全ての指を使った愛撫も、舌で深く入り込むような行為も、この愛し方の前では意味を無くしてしまうのでした。  少年のそこに巨大な性器をあてがいました。  少年は期待に身体を震わせています。  「頂戴!!頂戴!!」  少年は叫びました。  神は押し入りました。  穴は千切れ、肉が引き裂かれます。  構わずに思い切り突けば、少年の腹の薄い皮膚を突き破り、巨大な金色の性器が腹から飛び出します。  少年の肉は思った通りあまりにも甘く、神は吐息を漏らします。  ああっ・・・  いいっ・・・  少年が性器から白濁を迸らせ、うめきます。  血が腹から吹き出すことにさえ、少年は感じているようです。  流れ出す血は精液が流れ出すような快感を少年の脳におくっているのです。  少年の腹からとびだした性器が、少年のそんな様子に脈打ちます。  引き抜き、また貫きます。  少年の内蔵という内臓が、甘く神の性器に絡みつきます。  神は吐息をつき、その甘い肉をむさぼります。  血さえ甘く香ります。  愛するモノの血肉は貫くのも甘く、舌や口にも甘いのです。  でも神は泣いていました。   神にとって、きっと忘れてしまうとしても、少年と過ごした時間は幸せだったからです  少年を抱えてすごす夜は、眠りのない神に与えられることのなかった夢のようなものでした。  少年と話し笑う時間は、忘れてしまうとしても大切な時間でした。  でもあまりにも少年は甘く。   愛しくて、貫き、喰わずにはいられませんでした。  泣かないで  少年の腕を喰らい始めた時、少年は神にいいました。  まだ食べられていない方の腕で神の頬をなでながら。  「この瞬間は永遠だから。僕はこの瞬間に永遠にいる。あなたが忘れ去れても。だからあなたはもう一人じゃない」  その腕は炎の痣が刻まれた、神が愛した腕でした。  愛しさのあまり神はその腕にもかじりつきました。  ああっ  いいっ  もっと・・・もっと食べて・・・  少年が切なく叫ぶその声に、腹をさらに突き破り、もう穴などなくなった腹に金色の精液をぶちまけながら、また神は少年を喰らい、引き裂くのでした。  それはあまりにも愛しくて、あまりにも悲しい愛でした。  少年を殺しながら、少年を失うのを恐れ、その肉の甘さに酔いしれながら、消え去ることに怯えていました。  でも、少年の命が消える瞬間、神は一つの方法を思いつきました。  神は少年の時間を括ったのでした。  過去へと。  そして安心して、少年を喰らいつくしたのでした。  神は自分を2つの時間の中に同時に置きました。  流れる時間と、括った少年の時間の中に。  少年の時間の中では、少年はこっそり儀式を見て、神に恋をします。  そして、身代わりの花嫁になり神の元へやってきます。    そして、神に愛され死ぬのです。  そして括った時間は初めてみた儀式の日へと再び少年を送るのです。  何度も。  何度も。  何度も。  神は永遠の少年を手に入れました。  神は何度でも何度でも少年を愛します。  もう、忘れ去らなくてもいい、花嫁。  何度でも戻ってくる花嫁。  貫き食い尽くしてもまた帰ってくる花嫁。  神はそのベールを捲る時、きっと震えるでしょう。  そこには美しい炎の紋章をまとった美しい花嫁がいるのですから。  こうして孤独な神は永遠の花嫁を手に入れたのでした。  めでたしめでたし        

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