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第4話
目覚めた少年は戸惑います。
殺されるはずだったのに死んでいないことに、しかもここがどこなのかわからないことに。
神の人間よりははるかにおおきな身体がそこにありました。
「私の住処だ」
神は微笑みました。
そこは美しい洞窟で、獣の皮が敷かれたベッドの上に少年は寝かされていました。
岩のベッド。
岩のテーブル。
岩の椅子。
岩は滑らかにけずられ、輝いていました。
「雨粒が削って磨いた岩で作ったものた。美しいだろ?」
神は驚いたように、岩の家具をなでる少年に微笑みました。
その声も笑顔も優しくて、少年は胸に痛みを覚えます。
愛してくれた人は死に絶え、こんなに優しい声で話しかけられたことはなかったからてす。
あの優しい青年でさえ、村人たちの目を恐れて、怖々優しくしてくれたのです。
「僕を殺さないの?」
少年は神に言います。
「殺したくない」
神は答えます。
そして長い腕を伸ばして少年を抱きしめます。
6本の腕全てで。
「思い出した。遠い昔、誰かを愛していたことを」
少年はあまりにも神には小さく、抱きしめたなら壊れてしまうのが怖くて。
神はそっと囁き、そっと抱きしめます。
「暖かい。暖かい」
神は涙を流します。
何百年かぶりの涙でした。
少年は戸惑いながら抱きしめられていましたが、神にキスされて、嬉しげに応えたのでした。
神と少年は一緒に暮らし始めます。
神は色んなことを思い出します。
全てはおもいだせなくても。
それは昔の愛でした。
もう、忘れさったはずの愛でした。
愛した人達は去り、自分はとりのこされ、忘れてしまった過去でした。
胸を痛ませながらも、また少年が先にいなくなるのを神は知っていて、それでも、少年を愛し始めました。
人間か来ることなど出来ない山奥で、少年と神は静かに暮らしていきます。
少年は罠をつくり、獣や鳥を取り食べます。
神は何も食べません。
「食べないの?」
少年は不思議そうに聞きます。
「たべなくてもいいんだ。私がたべるのは・・・」
神はそこで言葉を止めました。
たべる行為は、愛の行為なのだと、少年は知らなくてもいいのです。
少年に食べられる獣や鳥が食べられることの意味など知りたくもないように。
昼も夜も関係なく、神は眠りもしないのですが、夜になれば、少年を愛し、泣かせて、眠らせます。
貫き喰らいたい想いは日毎つのりました。
愛しければ愛しいほど、喰らってしまいたくなるのです。
だから、私達は一人になってしまったのか、と人間達が存在するよりも前の記憶を探ってみますが思い出せません。
同じ姿の仲間を愛ゆえに喰らって1人になってしまったのかもしれません。
夜がくれば、少年のその鮮やかな炎のような痣をなめます。
少年は身体をひきつらせ、感じます。
その半身の痣は、今では少年の性感帯です。
ああ、可愛い。
喰らってしまいたい。
そうおもいながら、後ろの穴を舌で貫きます。
奥深く入り込み、舌でそこを存分に犯します。
舌を締め付ける穴。
ここを引き裂きながら押し入ったなら、どれほど気持ちいいだろう。
神は想像するだけで陶酔します。
可愛い性器を8本の指を複雑に動かし、絡めて
扱きながら、ここを千切ってやれば、どれほど可愛いだろうと夢想します。
少年の太ももに挟み込みこすりながら、少年の腸を割いて肉を割いて擦ることを考えます。
きっと熱くては気持ちよくて、可愛いでしょう。
でも神はそうしないのです。
愛でした。
貫くことは愛でした。
引き裂くことも愛でした。
でも、愛だけではもう満たされないからです。
少年にいて欲しかったのです。
神からすればほんの僅かな時間でしかなくても。
「愛しているよ」
そう囁いて少年を抱きしめて、眠らない神は朝を待つのです。
少年が目覚めるまで。
それは幸せな時間でした。
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