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「望んだものはただ、ひとつ」1-1

 各国から贈られてきた貢物の多さに、改めて王や王妃が捕らわれるということがどういうことなのか、シェリダンは思い知らされる。架醍に乗り込んだ時はアルフレッドを無事に救出することばかりを考えていたが、一歩間違えればこの溢れるほどの財宝を贈ってくれた国々と戦になっていたかもしれないのだ。ぶるりと震えが走り、シェリダンは無意識のうちに両腕をさすった。  城の中にいくつか存在する広間の一室を埋め尽くさんばかりの貢物を前に、エレーヌたちとしばし無言になる。貢物の種類は数多く、同盟や貿易の書状、武器などに使える鉄や鋼、各国の特産物にアルフレッドや王子たちへの金銀宝石など様々であったが、この広間に収められているのはすべて王妃――つまりシェリダンへ贈られたものだという。 「……エレーヌ、本当にこれらすべてが? 陛下へのものや王子たちへのものが雑じっているということは」  小さめとはいえ広間一室を埋め尽くさんばかりの金銀宝石や絹を前にしてシェリダンは思わずエレーヌに確認をとるが、エレーヌもビックリしたような顔をしながらも首を横に振った。 「いえ、執務官や女官たちが数十人がかりで何度も確認いたしましたので間違いはございません。こちらが妃殿下への贈り物となります」  今回主力として動いたのがシェリダンであることを各国の王は知っている。それゆえにシェリダンへの感謝を込めて貢物が多くなっているのだろうとエレーヌは言うが、シェリダンは目の前の光景をそうすんなりと受け入れることができなかった。

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