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「望んだものはただ、ひとつ」1-2
「……陛下は……、なんと?」
「妃殿下に贈られたものですから、妃殿下のお好きなようにと」
好きなように、と言われてもどうしたらよいのかシェリダンにはわからない。
「側妃たちにお分けいたしましょうか。すでに加工されているものは好みもあるでしょうが、生地や宝石などであればご自分の好きなように加工もできるでしょうし」
飾り物などは側妃も好きだろう。シェリダンは装飾品に興味がなく、仮にすべてを自分のものにしたとしても部屋に収まりきらない。
「では加工されていないものを中心にいくつか選別して側妃方にお渡しするよう手配いたしましょう。しかし、妃殿下は何かお気に召したものはございませんか?」
エレーヌの言葉に女官たちがあれこれ勧めてくれるが、残念ながらシェリダンに物欲はない。苦笑して首を横に振るばかりだ。
「私にはよくわかりません。陛下がお楽しみになってくださるものがあれば良いのですが」
とはいえアルフレッドも深蒼のサファイヤ以外は特に拘りを見せない。流石大国の王だけあってすべて最高級品だが、その基準はシェリダンに似合うかと肌を露出させないことだけだ。
「いつもと違う装いをなさるのもよいかと思いますよ。少し暖かくなってきましたから、お衣装を涼しいものになさって、飾りも合わせるなどされてはいかがでしょう」
多文化を受け入れてきたオルシアにあって、王妃の衣装はこうでないといけないという決まりはない。それに王妃へと贈られたものを一つも受け取らずに側妃へ渡しては、やはり角が立つだろう。
「それも良いですね」
シェリダンが頷けば、アルフレッドに負けず劣らずシェリダンを着飾らせることが好きな女官たちは喜んで衣装はあの絹で、飾りはあちらの宝石を、と貢物を物色し始める。それに笑みを浮かべて、シェリダンはエレーヌに視線を向けた。彼女はすべてお任せを、と頷く。頼もしいそれに、シェリダンはホッと息をついた。
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