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「望んだものはただ、ひとつ」1-3
一点ずつシェリダンが受けとる形で、各国の貢物を側妃たちに配り終えた後、仕立てられた衣装が完成したと女官たちが嬉々としてシェリダンの前に広げた。
「一度袖を通してみてくださいませ」
にこやかな女官たちに促されて、シェリダンは緑の衣装を脱ぎ白くゆったりとした下衣を纏った。赤く袖の広い衣を重ね金糸で刺繍の施された薄布を帯の代わりとして腰で結ぶ。下衣にも赤い衣にも両脇に深い切れ込みが入っており歩くたびにヒラヒラと揺れるが、下に白くゆったりとしたズボンをはいているため足が露出することはない。流石長年仕える女官たちだけあって、どれほど興奮しようとアルフレッドの逆鱗に触れるような衣装は避けたようだ。
銀の髪も結いなおし、貢物の中にあったルビーで作られた銀の額飾りをつけた。
「まぁ! 大変お似合いです妃殿下!」
「青や緑のお衣装もお似合いですが、赤も大変お似合いですわ!」
女官たちから口々に誉めそやされて、賛辞に未だ慣れないシェリダンはぎこちない笑みを浮かべた。
洗練な空気を纏うシェリダンはよく青や緑といった寒色系の衣装を纏っている。下品に見えない美しい赤の衣装は新鮮で、普段とはまた違った雰囲気だ。
「着心地はいかがですか?」
見た目が美しくとも着心地が悪くてはいけない。何より大切なのはシェリダンが苦痛を感じないことなのだ。そんなエレーヌを安心させるようにシェリダンはひとつ頷いた。
「とても楽です。それに重ねてはいますが軽く適度に涼しいので今時分の季節には最適ですね」
赤というのは着慣れないが、着心地はとても良かった。流石貢物として贈られるだけあって高級なのだろう。
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