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紫の章6
「信じられません……青龍様に向かって…あんな…ペ、ペットの様な扱いなど…いくら陛下であらせられると言っても酷すぎますっ!」
先程は朝議の途中だったらしいが、グアン達の来訪で一先ず解散となり、一度フェイロンの私室に葵を連れて行くことになった。
グアンはまわりの視線を気にしてか、後ろから黙って着いてきたが、フェイロンの私室に着いた途端、待ってましたとばかりに声を荒げて説教が始まったのだ。
実はグアンに抱っこされた時より、フェイロンに犬扱いされた時の方が尻尾が触れない分、葵的には快適だったのだが、それを伝える術はない。
グアンが憤懣 やるかたなしといった調子でフェイロンを舐 めつけているが、フェイロンはどこ吹く風と言った様子で背がアーチ形の美しい椅子に深く腰掛けていた。
葵はその足元で、二人の話に耳を傾ける。
紫色の絨毯の上に蹲ると、予想以上にふかふかで先程の紫龍草の花畑を思い起こさせる。
恐らくこの国での紫色は、希少価値の高い色なのだろう。
紫色の服を着ているのは、朝議の場所でもフェイロン以外いなかったし、この皇帝の私室の調度品にもふんだんに使われている。
正殿ほど華美ではないが、一つ一つの装飾品が一目で上等なものだと分かる美しい造形をしていた。
「ペットのような、ではなくペットだろう。これから毎日餌と寝床を提供するんだぞ。役に立つか立たないのか分からない動物を飼うんだ。家畜でないならペットという事になる」
フェイロンは完全に面白がっている顔だ。
どうやら、この二人の距離感は皇帝と臣下というよりも、もう少し近しい間柄らしい。
「いくら龍神に愛されし紫の君と言われる陛下でも、このような扱いを青龍様に繰り返せば、龍神様より天罰が下ってもおかしくありませんよ!」
と、それまで笑って聞いていたフェイロンだが、天罰の話を聞いて顔を急に強張らせた。
こんなに不遜な皇帝でも、天罰が恐ろしいんだろうか?葵が意外に思っていると、グアンもフェイロンの様子に驚いたらしい。
「すいません、過ぎたことを申しました。お許しください。紫龍草と同じ紫の瞳と髪を持ち、お小さい頃より龍王と噂されてきた陛下が、龍神に寵愛される事はあっても、天罰など下るはずがございません」
「…いや、大丈夫だ。お前たち、星見の一族は『青龍の民』とも言われる一族だ。おまえの前では、アオの扱いには気を付けよう」
「……私の前だけでなく、普段からお気を付け下さいませ」
フェイロンの軽い口調に、グアンがホッとした顔で受け答えた。
場が和んだ所で扉開き、侍従が頭を下げながら入ってきた。
「陛下、シィンが参りました」
「入れ」
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