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青の章21

「ああ、お前が元の世界に行ったのではとグアンが言うのでな。紫龍草を食べれば追いかけられるのではと思い、試してみたんだ 」 「大丈夫だったの!?」  葵は驚いて聞いたがフェイロンはケロッと答えた。 「酷く不味かったが特に問題はなかったぞ。気付いたら小さな馬小屋のような場所にいてな」  馬小屋とは、もしや葵の家の屋根裏部屋の事だろうか……。 「どうしたものかと思いながら階段を降りると、お前の友人が心底びっくりした顔で出て来たのだ。いやあ、お前の友人はとても怖いな。なぜちょっとも待てないんだとひどく叱られたぞ」  友人というのは間違いない。葵は後ろに控えていた、人の三倍はある篝火のように輝く赤い大きな鳥に目をやる。 「千尋……」  紅玉のような瞳がゆっくりと弧を描いて葵を見た。 「アオちゃん、また会えたね」  朱雀の姿をした千尋が嬉しそうに翼をはためかせる。 「その姿、どうして……いや、それよりもどうやってここに? 紫龍草がないとこちらには来られないってーー」 「ふふふーー。あったんだなあ、それが。アオちゃんがいなくなった後、アオちゃんの脱いでいった洋服の匂い嗅いで余韻に浸ってたんだ。そしたら一本の紫龍草が袖の中に挟まってるの見つけてさ」 「あ!」  それは間違いなく、葵がクロの所に行くときに一本摘んでいったフェイロンが咲かせた紫龍草ではないか。  匂いを嗅いで、というのに多少引っ掛かったがーー。千尋が見つけてくれた小さな奇跡に葵は胸がいっぱいになった。 「そうしたら突然王様って人が現れたからさ、びっくりしたよ」  急に低い声になり、千尋はキッとフェイロンを睨む。フェイロンはさっと気まずそうに目を逸らした。よっぽどこっぴどく怒られたらしい。 「しょうがないから、その一本を王様と半分こしたんだ。でもこの王様すっとぼけてて、すごく頼りないからさ、俺が王様をアオちゃんの所に送り届けなきゃ!!って思ったらこの通りだよ。おかげでまた色んな事思い出したよ 」 千尋はもう一度ゆっくりと翼をはためかせる。三メートル程浮上したかという所で大きく仰け反ってから、突如花畑の一角をめがけて急降下した。 「ギャッ!!離せ!!離せよっクソ!!」  帰ってきた千尋の嘴には小さな黒蛇が咥えられている。間違いなくクロだ。千尋はクロをペイッと葵の前に放ると、両翼を大きく広げて威嚇した。 「元の力の強さはお前の方が強いけど、今の時期は冬将軍と呼ばれるお前より俺の方が有利だぞ。お前また青龍を困らせたみたいじゃないか。申し開きがあるならしてみろ」

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