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青の章23

 クロは叱られた子供のように震えている。 「あ、あんたの法力が、凄く弱ってるなって思ったんだ。だ、だから思い出さないのかなって 」  成る程。何となくそうじゃないかと思っていたが、葵は前の代の青龍に比べて法力が弱いらしい。  幼獣の姿でこちらの世界に来たのもそれが原因だったのだろうか? 「だ、だから、そこの王様と番になったら、力を取り戻しちまって……色々、お、思い出しちゃうんじゃないかって、お、思って、お、俺。俺ーー」 「フェイロンと番になったら?力を取り戻すの?」 葵が疑問を投げかけると、後ろから千尋が答えてくれた。 「あれ?アオちゃん思い出せてない? 王様はアオちゃんの半身なわけだから、番になったら本来の力はかなり取り戻せるよ。まあ、元の世界で言う運命の番ってやつだね 」 「……え? 」  確かに過去の記憶では、青龍が王に魂を分けたとかなんとか言っていたが、それってそういう意味だったのかーー葵は隣で黙って聞いているフェイロンにそっと目線をやる。フェイロンは何の話だ?という風に首をかしげた。 「不思議だよね!元の世界では魂を分ける力を持ってる人なんていないはずなのに。まあ、そもそも向こうの世界でも、運命の番なんて都市伝説みたいなものだもんね。昔の青龍の話がなんか向こうに伝わってとか、そうゆう事だったりするのかな?」  だったら面白いね。と千尋はカラッと笑っている。  フェイロンと自分が運命の番なんてロマンチックな響きの関係だったなんて。急に気恥ずかしくなってしまい、葵は戸惑った。  「龍」や「王様」など、完全に異世界の言葉に囲まれていた中で、「運命の番」という言葉は何だか現実感がグッと増す。  絶対そんなものには自分には縁がないだろうと思いつつも、秘かに憧れを描いていた学生時代の黒歴史まで思い出されてしてしまった。あの時の自分が今の自分を見たらどう思うのだろうーー。 (きっと、昔の俺でもフェイロンに一目惚れしちゃってたろうな) 「なんだ?なんだか今可愛い顔をしていたぞ」  フェイロンに声をかけられ、葵は真っ赤になって肩をすくめる。 「いや、そこイチャつき始めないでよ。空気読んで。流石に玄武が可哀相だって俺でも思うよ 」 「ご、ごめん……」  千尋に呆れた声で言われて、慌ててクロに目をやる。 クロはさっきと変わらず、死にそうな顔をして下を向いたままだった。フェイロンと葵の話もろくに耳に入っていない様だ。 「ごめん、話、中断しちゃったな。それで、俺がフェイロンと番になるのを必死に止めようとしてたんだね?」  気を取り直して再びクロに話しかけると、先生に対するように素直に返事が返ってくる。 「う、うん……。ちょうど火トカゲがお前の近くにいたから、そいつと入れ替わってずっと様子を伺ってた……いよいよヤバいなって思ったから、もう適当な人物と番わせちゃえばいいやってーー」 「待て、それはどうゆう事だ?」 「ちょっと、それどうゆう事!?」 今度はフェイロンと千尋が、ほぼ同時に口を挟んだ。 

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