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青の章29
葵は息をするのも忘れてフェイロンを凝視した。赤子を持つ指が震え、胸が震える。全身に熱が駆け抜け、心臓の鼓動がドクンと大きく跳ねた。
「あ?」
あらぬところが熱くなり、下半身にじわりと汗と汗でない液体が染み出る。ぞわぞわと覚えのある感覚が背筋を駆け抜けた。
「葵!?この香りは!!」
「アオちゃん、発情(ヒート)が来たの!?どうして!?」
四肢に力が入らずよろめいてしまった葵を、フェイロンが慌てて支えてくれた。
「あ、分から……い……なんでぇ、はぁっどう……し……」
体はどんどん熱くなり、熱の塊が全身を溶かすようだ。頭まで朦朧としてきて、葵は自分でもどうすればいいか分からなくなって目頭が熱くなった。
「嫌だ、なんでぇ……今度こそ、ちゃんとフェイロンに……好きって、好きってちゃんと……フェイロ……好きぃ……んん……」
「葵! 分かった、分かったから!!」
フェイロンが周りから守るようにしっかりと葵を抱きしめてくれた。
白虎が横から近づいて、赤子を葵の手から取り上げた。今度はすんなり赤子も葵の指を手放した。
「玄武は俺が預かる。どちらにしろお前達は少し離れた方がいい。お前は安心してそこの男と子作りしろ」
「う……ありがとう、びゃっこ……」
考えなくちゃと思うのに、葵はもう白虎が何を言っているのか、自分が何を言っているのかよく分からなかった。分かるのはーー
思わず自分を抱きしめるフェイロンを見上げた。上目遣いのその瞳は自分でも淫欲に濡れているのが分かる。
ゴクリと唾を飲む音がした。
「待って、お願いだからここで青姦だけは勘弁して。物凄く物凄~く不本意だけど二人とも俺の上に乗って、俺の翼なら王城まですぐだから。アオちゃんは殆ど理性飛んじゃってるから、王様、あんたがしっかりしてよ」
「分かっている、すまん」
フェイロンは言葉少なに答えると、葵をお姫様のように横抱きにし、ひらりと朱雀の姿に変化した千尋の背に跨がった。
「白虎殿、落ち着いたら宮殿に来られよ。礼をしたい」
「気にするな。今は青龍に集中しろ。それが我らにとって何よりの礼だ」
赤子を腕に抱きながら見送る白虎に、フェイロンは小さく頷いた。
「い~い?行くよ!」
千尋は声を上げると、大きな翼をいっぱいに広げ空高く舞い上がった。
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