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【番外編】カジのつっくん観察日記 2

「五藤くんて、小学生の頃もやっぱりクールだったの?」 「そうだな、あんま変わってないかもな」 「へえ~、そうなんだー」  あーあ、嬉しそうな顔しちゃって。  つっくんが笑う度、ふにゃん、て感じになる。でっかい黒縁眼鏡が隠してるけど、超童顔な可愛い顔には癒やされる。  なんつーか、小動物を愛でる感覚だよな……。頭を撫でてヨシヨシしたくなるっつーか。  俺は、ゴミを触ってない方の手を、つっくんの頭にポンと乗せた。 「うおっ、すっげえ柔らかいな、おまえの髪」  わしゃわしゃ 「……みたいだね」  されるがままで、何故かつっくんは再びほっぺをピンク色にしている。  わしゃわしゃわしゃ    ……なるほど。君の彼氏のお墨付きってわけですか。  俺は特別勘が鋭いわけじゃないけど、何でだかわかっちまった。  貴也がつっくんをかばって額に怪我したあの日、病院で。  つっくんは教師のくせに、おんおん泣きじゃくってて百パー役に立たなかったから、俺が代わりに色々面倒くさいことを全部こなした。  そして、つっくんを連れて行った病室で。俺は長年のツレが、他人にあんな視線を向けるの初めて見たのだ。  猫可愛がりしてる弟の三樹とも違う。過去の彼女にもあんな感じじゃなかった。凄く、大切なものを見るような、目だった。  そりゃ、まさか! とは思ったよ、さすがに俺も。相手は男だし。貴也の大嫌いな教師だし。  でもなあ、もう疑いようがなかった。(貴也も俺に隠す気ゼロだったみてえだし)ほんと、察しの良い自分が怖いぜ。 「ねえ、くしゃくしゃになっちゃうよ~、これでも一応セットしてるんだよ毎日」  わしゃわしゃわしゃ 「悪ぃ。なんか、マイナスイオン浴びてる気分になってた」 「あ、五藤くんとマモルくんだ」  なに!?  やべえ。  つっくんのマイナスイオンを浴びてて周囲が見えてなかった。  つっくんの頭をわしゃわしゃしてた俺の手がひょいと持ち上げられる。 「今日は早いな、カジ」  あっれぇ~、貴也くんなんか怒ってる? あ、ちょっと痛いかも。 「五藤くん、マモルくん、おはよう」  つっくんはふにゃん、て笑顔を二人に向けた。あんたの彼氏が俺の手をギリギリしてるんだけどー?  えー、二人の恋のキューピッド的な俺に対して塩対応すぎない? 貴也くーん。 「つっくんおはよ!」  マモルはいつものアホ全開な感じ。なんか、安心感。 「おはよ……おい、冷えてんぞ」  貴也はつっくんのほっぺたをするりと触った。 「ひゃっ……」  つっくんの身体がぴくってなった。貴也は両手でつっくんのほっぺたを包んで、……温めてる?  つっくんの両手はゴミとゴミ袋で塞がってるから、されるがままだ。でもほっぺがピンク色になってるから恥ずかしいのかも。でも嬉しそうで……くそ、可愛いな! 「冷え切ってるじゃねーか。なんで上着着てこないんだよ」 「だって、今日暖かいかなって思ったんだもん」  つっくんはぷくってほっぺを膨らませている。え? あんた、二十四歳成人済男子だよね? なんなの、その庇護欲をそそる可愛さは!  貴也は「ったく」とかいいつつ、鞄からジャージの上を出すと、つっくんの肩にかけた。 「あ、ありがと」  先生! 俺の親友が彼氏感全開なんですけど!!(過去最高に)朝から目の前でいちゃついてんですけど!(この場合の先生とは当然つっくんじゃなくて、佐尾ちゃんでもいいけど!) 「貴也やっさしー。よかったね、つっくん」 「うん」  貴也は満足そうだし、マモルとつっくんはほのぼのしてるし。  マモル、おまえがおバカで助かったよ……。はあ……。                         〈おしまい〉

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