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【番外編】カジのつっくん観察日記 1

 お、今日は俺が一番乗りかよ。  校門を抜けて渡り廊下に差し掛かると、その向こう側に、小さい頭がぴょこぴょこ上下しているのが見えた。 「あ、カジくんおはよう」  ふにゃりと柔和な顔をほころばせて、超童顔の教師が言った。 「はよっす」  今日も寒いね~、と言いながら、童顔教師「つっくん」は散らばったゴミを拾う手を休めない。  しょうがねえなあ、と思いつつ、俺はつっくんを手伝うために隣に並んだ。隅っこにペットボトルやジュースの空き缶が、山積みになっているのだ。 「ったく、こんなとこに並べるならゴミ箱まで持っていけよなあ」 「あ、ありがとね」 「いや、だってこれ、生徒が置いてんだろ」  この学校は「自由学園」の名の通り、何でも自由な校風だ。とにかく自由すぎるせいなのか、ゴミがあちこちに散乱しているのは日常茶飯事だ。  校則は「校章と学生証の携帯」くらいだと思う。(俺もちゃんと把握していないけど)しかし、派手な格好で登校する生徒は意外に少なくて、ほとんどの生徒は、高校生らしいカジュアルな服装の人間ばかりだ。(俺とマモルは完全に派手側だが)  二人でしゃべりながら黙々とペットボトルや空き缶をゴミ袋に分別していく。そのうちの一つに、おまけのキーホルダーの袋が付いているのがあった。 「あ、それ◯◯だよね」 「おー、よく知ってんじゃん」  ディ◯ニーのキャラクターだ。割と人気で、クラスの女子が通学鞄に付けたりしているのをよく見かける。 「うん、この前五藤くんと映画の帰りに寄ったゲーセンにあって……」 「へえ」  しん、と静かになったから隣を見ると、つっくんはほっぺたをピンク色にしていた。 「自分で言って照れるなよ……」 「べ、別にそんなんじゃないもん!」  かああ~、という効果音が聞こえてきそうな勢いで、つっくんのほっぺたが色濃くなる。    ふん。やっぱデートか。 「映画、何見たんだ?」 「あ、あのね、名探偵コニョン」 「は?」  アニメかーい!  デートならそこは恋愛ものとかさあ。 「三樹くんも一緒に行ったんだよ」  あ、なるほどね。(察し) 「前に五藤くんちに行ったとき、三樹くんと好きなアニメが同じで、それで」 「それがコニョンだったってか」 「うん」  つっくんはにこにこして言う。(もちろん、話してる間もつっくんのゴミ拾いの手は止まらない)(だから俺も止めない)    五歳児と好きなアニメが同じってある意味すごいよつっくん。そりゃ、国民的人気なアニメだけど。  それにしても、と思う。  人って、表情や態度でこんなにも印象が変わるのものかと未だに驚いている。  マジで百八十度違う。  つっくんなんて冗談でも呼べない雰囲気だった。影で生徒に「鬼の松澤」って呼ばれてたし。  貴也なんか、一番煙たがってた。親父さんに似てるからって。 「鬼の松澤」の授業は緊張感が凄かった。身体小っちゃいのに威圧感ハンパなかったし。  今思えば、つっくんの緊張感が俺達生徒にも伝わって来てたんだろうけど。  相当無理してたんだろうなって思う。その理由は、まあ、貴也なら全部知ってんだろ。 「カジくんも、三樹くんに会ったことあるんでしょ」 「おう、俺は小学校から貴也と一緒だからな。三樹が生まれた頃から知ってるぜ」 「えっ、そうなの?!」  お、すげえ食いついた。

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