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悲鳴(中篇)
しかし、根元を縛られている紐が邪魔だ。精を吐き出したいのに吐き出すことを許されず、藤次郎の視界が揺れる。
「っひ、ああっ!!」
男の白濁がだくだくと最奥へと注がれる。
だが、男はそれで満足しなかった。
「精力剤を手に入れてな。試しに飲んだんだ。俺の種が欲しいだろう? もっとやろう。もっと注ぐぞ?」
男は藤次郎の魅惑的な後孔から引っこ抜くと、美しい肢体に射精する。
そしてまた、彼の魅惑的な後孔を勢いよく穿たれた。
男が抽挿を繰り返す度に腰を打ち付ける音が藤次郎を打ちのめす。
「放せっ、誰か!!」
男の責め苦に初めて助けを求める藤次郎の唇は分厚い唇に塞がれ、声を掻き消された。
「っふ、うううう……」
口内を蹂躙する男の滑った舌が気持ち悪い。
藤次郎は顔を歪め、それでも抗うことができず、腰を振る。
(銀之助様……)
このままでは本当に抱き殺されてしまう。
恐ろしい結末が藤次郎の頭を過ぎる。
せめて、せめて今一度だけでも、銀之助に会いたかったと藤次郎は思った。
けれども自分は所詮罪人で、真っ当に生きる彼とは釣り合う筈もない。
藤次郎は目を閉ざし、絶望に打ちひしがれた。
周囲には、自分を穿つ男が打ち付ける卑猥な音と、男が放つ白濁の水音が覆う。
藤次郎の意識が散漫になり、朦朧とする。
「藤次郎、俺は信じていたってぇのに!!」
接吻の合間に告げられる言葉。荒い息が藤次郎の顔に降りかかる。
「んっ、ふぅうう……」
強く握った拳は力を失い、ぐったりする。
その中で、障子が開く音と複数の足音が微かに聞こえた。
「ここはもうすでに包囲した! そこまでだ、弥兵衛(やへえ)!!」
座敷に入り込んだ同心数名が男の周りを囲む。
だが、男は往生際が悪かった。
「このままじゃ終われねぇ! こいつもあの世へ道連れだ!!」
「あっ……」
藤次郎と接合していた雄を引き抜くと、懐から小太刀を取り出した。
鋭い切っ先が藤次郎の喉元を貫かんと固定される。
「道を開けろ、こいつを殺す!!」
藤次郎を盾にして男は座敷を離れる。
「そうはさせん」
気配もなく背後からやって来た。藤次郎の首下に突きつけた刃物を持つ手が捕らえられた。
「ぎんのすけ、さま……」
男に捕らえられている藤次郎が、彼の名を愛おしげに呼んだ。
男は、新たに現れた伊達男に腕を後ろに回され、固定されると同心の縄に巻かれた。
「無事か、藤次郎」
解放された藤次郎の身体が力なく傾けば、力強い腕に抱き留められた。
「銀之助様」
「もう大丈夫だ」
銀之助のその言葉に藤次郎は張り詰めた息を解く。
「俺を捕らえても仲間の居場所はわからずじまいだぜ?」
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