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悲鳴(後篇)
最後の悪あがきだと、男は分厚い唇を歪ませ笑う。
しかしそれさえも銀之助は手を打っていた。
「果たしてそうかな? お前は上手く相方を逃がしたと思っただろうが、九つ時、お前は関所前にある茶屋で男と会っていたな?」
銀之助はそこまで言うと、男の勝ち誇った顔が真っ青になった。
でっぷりとした身体は力を無くし、床に膝をつく。
「阿片を密売している男は捕らえさせてもらった。弥兵衛、神妙にお縄を頂戴しろ!! 引っ立て!!」
同心の言葉に、一同は立ち上がり、斯くしてこの一件は終わりを告げた。
「藤次郎、辛い目にあわせたな」
後に残ったのは銀之助と藤次郎のみだ。
銀之助は、涙で濡れた藤次郎の頬を撫でてやる。
「いえ、俺はもう覚悟していたから……」
「あとはお奉行がなんとかしてくださるだろう。藤次郎、宿屋へ行こう」
熱を持つ身体が宙に浮く。
藤次郎を横抱きにすると、銀之助は隣の宿屋へと向かった。
―悲鳴・完―
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