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微睡み
(八)
今頃、おはなはどうしているだろうか。おそらくは町名主に可愛がられ、すくすくと可憐に育っているに違いない。
「……元気にしているかな」
三年前を思い出し、藤次郎はあの頃の空と重ねる。
「お前に懐いていたからな。近々会いに行ってみるか」
銀之助もまた、藤次郎と共に三年前のあの日を思い出していたようだ。常に引き結ばれていた唇には微笑が浮かんでいる。
「うん」
「では、それまでは俺が藤次郎を独占するとしよう」
銀之助の腕が藤次郎へと伸びる。
「俺の心は何時だって貴方で満ちている」
藤次郎は自ら身体を開き、銀之助を受け入れる。
穏やかな昼下がり。藤次郎は好いた人と共にいられることの喜びを味わっていた。
―番外編・完―
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