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嘘?①

4月1日 晴れ 今日は、エイプリルフールです。 父上に和室に呼ばれて、ピンク色の封筒を渡された。 筆で書かれた表書きには"柴牧 青葉《しばまきあおば》様"と、オレの名前が書かれている。 なに?これ? 父上が、一つ咳払いをして、話し始めた。 父上が代表を務める"しらつき紡績株式会社"は、"しらつきグループ"の傘下に入っている。 そのしらつきグループを仕切っているのは、鎧鏡《がいけい》家っていう、変わった苗字の一族だ。 我が柴牧家は、先祖代々、その鎧鏡家に仕えている家臣の家柄だって話はしたことあったと思うけど、って、え?何だか話がおかしな方向に……。 えっと……。はい。オレ、そんなの初耳だけど。だから、なに? しらつきグループの、管理職以上を任されている人たちは、みんな、ホラガイ吹いて戦場に出てたような時代から、鎧鏡家の家臣なんだよ、とかって、そんな軽いノリで、そんな話を聞かされたところで、父上……。 うん。だから、この封筒はなんなんですか? 話の呑み込めてなさそうなって、ホントに呑み込めてないんだけど……。 そんな息子にため息をつきながら、父上は、さらに説明を続けた。 いや、ため息つきたいの、オレなんじゃないの? さっき、会社から帰ってきた父上に、和室に呼び出された。 たいがい、ここに呼ばれるのは、何か真剣な話をする時だ。 ……真剣な話をする時、だと思ってた。 別に、何か悪さをした覚えもないのに、一体なんだろう?って、緊張しながら座ったっていうのに、今日の父上の話は、聞いても聞いても、要点が掴めない。 鎧鏡家は、神話か?って時代から、女性を排除してきた、とか。 ずっと、女性は「穢れ」の象徴であると信じられてきたのだが、とか。 鎧鏡家は、女性を家から排除することで、繁栄し続けてきた、とか、なんちゃらかんちゃら。 もうだって、それ以上、頭に入ってこないんだもん。 「え?だから、父上、何が言いたいんですか?え?でも、女の人がいないうちって、鎧鏡家の人たち、誰から生まれてきたの?」 「え?まずその質問?」 「え?だって、子供って、女の人が産むものですよね?」 「とにかく、現代の理屈が通らない世界なんだよ、青葉」 父上が、がっくりうなだれた。 え?理屈が通らないって、なに?男の人が、子供産んでるってこと?   「お前を、もう少し早く産むか、遅く産むかしていれば、関係のない話だったんだけどね」 父上が、更にうなだれた。 なに、自分で産んだみたいなこと言っちゃってんの? え?オレ産んだの、母様だよね? 「ちょっ……え?なに?だから、なんなんですか?で、この封筒、なんなの?」 ピンク色の封筒を、父上に見せた。 「明日は、その鎧鏡家の若殿様の、お誕生日なんだ。その封筒は、若殿様の誕生会への招待状だ」 「え?はい。え?なにそれ?」 「その"桃紙"が来たからには、お前は、鎧鏡家の家臣として、明日の誕生会に、出席しなければならない」 「は?モモガミ?」 誕生会に、出席?しなければならない? 鎧鏡のお坊ちゃんって、友達いない、さびしい子、ってこと? 社員の息子にまで、誕生会に出席させるとか、人数集めのためってヤツ? あ、そんなマンガ、昔読んだことある! それ? それなんですか? でも、なに?この父上の、悲壮感。 「桃紙での召集を無視することは、どんな事情があろうが許されない。お前は明日、父が死のうが、うちが火事になろうが、瀕死の重体だろうが、誕生会に出席するんだ」 「え?なにそれ?」 「明日の誕生会は、誕生会であって、誕生会ではない」 「は?」 「誕生会と言う名の、若殿様の奥方様探しだ」 「へ?」 「明日、若殿様の奥方様探しのための、展示会が行われる。お前は、その展示会に自身を出展することを許された」 『テンジカイ』?『シュッテン』? 「明日、お前が、若殿様に気に入られたら……」 父上が、オレをジッと見つめた。 変な雰囲気に、唾を飲み込む。 え? なに? なに盛り上げてんの?父上! 「なに?」 「お前は、若殿様の、奥方様になる」 「……」 "オクガタサマ"って、なに? ポカーンとしている息子に、父上がさらに続けた。 「明日の誕生会で、若殿様に気に入られたら、青葉は、若殿様と結婚するんだよ」 ……えっと。 今日は、エイプリルフールだよ? 誰が、そんな話、信じると思ってるんですか?父上。

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