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嘘?②

「言っておくけど、明日あっくんが出席しないと、パパ、首はねられちゃうから。あ。会社クビって意味じゃなくって、ホントの意味で」 うえ?!ホントの意味ってなに?!母様! 「そうそう。とにかく、青葉が、明日の展示会に出てくれないと、パパ、ホントに打ち首になっちゃうから。もしくは、お手打ちだよ?お手打ち!青葉が明日行かないと、反逆罪でパパ、抹殺されちゃうよ」 「え?!」 「パパを助けてあげてぇ!」 ……全く、真剣味が伝わってこないんですけど。母様。 「あの。とりあえず、その展示会?に出ればいい、んですよね?そうすれば、父上は、打ち首にならなくて済むんでしょう?」 「そうそう!とにかく、展示会に出るだけでいいから」 「なによ、パパ!出るだけでいいなんて、なに弱気なこと言ってんのよ!うちのあっくんが、選ばれないわけないじゃない!しかも、候補に選ばれるだけでも、何万石かいただけるって、おばあちゃまが言ってたでしょ?そうなったら、うちの社員さんたちに、臨時ボーナス出してあげてもいいんじゃない?」 「まあ、そうなんだけどね」 「……」 何万石って……。今そんな単位で、日本経済動いてないです、母様。 っていうか、臨時ボーナス? 金?金なんですか?最終的には、金の問題なんですか? 夢なら、もういい加減覚めたい。 赤飯の味もわからず、詳しい話もそれ以上聞けないまま、夕食は終わった。 『ごちそうさま』と言うと、母様が『もうお風呂に入りなさい。今日は念入りに洗うのよ!特におシモ!』とか、言ってたけど、聞こえないふりをして、自室に戻った。 押入れから布団を引っ張り出して、倒れこむように横になった。 「はぁ……」 何一つ、信じたくないけど。 さっきの二人の話を要約すると……。 オレは明日、鎧鏡家の若殿の結婚相手を決めるための"展示会"ってのに、出なければいけないらしい。 いやいや、展示会ってなに? 展示する会、だよね? そこにオレ自身を"出展"することを許されたって、父上は言ってた。 許されたってなんだよ? オレが、出展させて欲しくて、仕方ないみたいじゃないか!二科展とかとは、わけが違うんでしょ? オレ自身を出展するって、どういうこと? いやいや、でも、あくまで展示する会なんだよね? そこで、結婚相手に選ばれるかどうかは、わからないってことだよね? うん!うんうん! そうだ!そうだ! とにかく、明日の誕生会に出れば、父上は手打ちにはされないらしいし。 ……っていうか!手打ちってなに?ナニ時代? もう、そんなツッコミ、どうでもいいや。 うちが、他のうちとは、ちょっと違うのかな?っていうのは、薄々気付いてはいたけど。 こんなに、おかしなうちだとは思っていなかった。 家臣とか。 殿様とか。 手打ちとか。 何万石とか。 いやいや。大体ね?まず、男と結婚するってなに?そこでしょ?そこ!殿じゃなくて、姫ならね?もう、どんな子でも文句言わない。オレもう、女の子ってだけで、喜んで、出展でもなんでもしちゃいそうな勢いに、現在なってるけどね?だって、"殿"って、男ってことでしょ? もう、だって、もう、それ、何もかもが、常識から外れちゃってるでしょ? いやいや。そもそも、この話、ホントのことなの? ……。 ホント、なの? ホント……なのかな? 若殿の奥方に選ばれるのが、名誉なこととか言ってたけど……。 息子が、『男の人と結婚します!』なんて言って、名誉なことだなんて言う親、どこの現代日本にいるんですか?母様。おかしいことに、早く気付いて! いや。いや、もう。とにかく!ホントかどうかも、信じきれてはいないけど。もう、万が一に備えておかなくちゃ! 母様じゃないけど、本当かどうかなんて、明日にならなきゃわからないことは、悩むだけ無駄だ。 父上にも、母様にも、何を言っても無駄そうだし、自分の身は、自分で守らなくちゃ!   母様なんて、結婚相手に決まれば、何万石かもらえるなんて言ってたけど……。 ていのいい、人身売買じゃないですか!それ。 家臣の子供を、無理矢理呼びつけて、結婚相手を決めるだなんて。 どんなヤツなんだよ?その鎧鏡家の若殿って。 自分で、結婚相手も見つけられないようなヤツがトップなんて、鎧鏡家もたかが知れてるよ。 とにかく! なんとしてでも、展示会を切り抜けて、またここに無事帰還してみせる! そう決心した時には、もう、4月2日の朝だった。

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