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学祭騒動再び~最終日・嗚咽〜②

皇に手を引かれて進むこの森は、樹海ジュニアなんて呼ばれているくらい深い森だ。一番最初に家出した時さまよった、曲輪の中の森を思い出す。でも、ここが曲輪の森と違うのは、歩くのに困らない程度の道があることだ。 皇は躊躇うことなく、獣道のようなその道をオレの手を引いてずんずん進んだ。 外灯なんか一つもない森の中は、月明かりだけが頼りだ。 そんな闇夜の中でも、皇がようやく足を止めた場所が、森の中央にある時計台だということはすぐにわかった。 遠くからしか見たことがなかったこの時計台は、真下から見上げると、怖いほど大きい。 口を開けて見上げていると、古めかしい鍵を取り出した皇は、重厚そうな木のドアを開けて『入れ』と、オレの背中をやんわり押した。 「うわぁ……」 一歩足を踏み入れると、壁一面にはめられているステンドグラスが、優しく月明かりを透して、床に色をつけていた。 まるで海外の教会のようだ。 荘厳な雰囲気に見惚れているオレの手を引いて、皇は、部屋の端に見えていた階段を上り始めた。 ところどころ月明かりに照らされているらせん状の階段を、皇に手を引かれるまま昇った。 息が切れてきた頃、階段の前に小さなドアが現れた。 皇は小さな鍵を取り出して、ガチャリとそのドアを開けた。 天蓋付きの大きなベッドが、どんっと視界に入ってきた。それ以外は、壁の高い位置にある小さな窓に掛けられた華奢なはしごが一つだけしか見当たらない小さな部屋だ。 ベッドの天蓋に付けられた赤いカーテンに、小さな窓からまっすぐ一本、月の光が刺さっていた。 「雨花」 皇に手を引かれて、ベッドに座るよう促された。 月明かりだけの薄暗い室内でも、オレの隣に座った皇の顔は、恥ずかしいほどよく見える。 「雨花、もう……良いか?」 「え?」 鼻と鼻が触れ合うほど顔を近付けて、皇はもう一度『良いか?』と、聞いてきた。 「な、に?」 あとほんの少し、顔を上げたら……唇が、重なる。 「先程、駄目だと申したであろう?」 皇が何かを言うたびに、唇に皇の息が、かかる。 それだけで……心臓が壊れるんじゃないかってくらい、ドキドキした。 皇が何を言ってるのか、わからない。 だってもう……難しいことなんか、何にも考えられないよ。だって……皇が、こんなに近いから。 「え?」 「吐いたばかりだと……」 ああ、さっき倒れた時、オレが吐いたばかりだからって、キスを止めたことを、言ってるの? バカ……そんなの……謝恩会でお前と一緒に散々飲み食いしたんだから……もう、"いい"に、決まってる。 オレは……ほんの少し、顔を上げた。 一度重なった唇を確かめるように、何度も離してはまた重ねた。 久しぶりの、皇との……キス。 何度キスを交わしても、まだ……足りない。 ここに皇がいるってことを……もっともっと……わからせて欲しい。 力の抜けた唇を、皇の唇がふわりと何度も包み込んだ。 もうそれだけで……息が上がる。 唇が離れた瞬間大きく息を吐くと『雨花』と小さくオレを呼んだ皇が、コクリと喉を鳴らした。 「口を開けよ」 皇に言われるまま、ほんの少し開いた口に、ピタリと皇の唇が重なる。それを合図に、どちらからともなく伸ばした舌と舌が、ザラリと重なった。 「ふっ……」 ピクリと体を揺らすと、皇は唇を重ねたまま、オレの腕をぐっと押した。 オレをベッドに仰向けに押さえつけて、皇は、ベッドの天蓋から垂れている真っ赤なカーテンを完全に閉めた。 カーテンのしまったベッドの中は、月の明かりさえ入って来ない。真っ暗な空間の中、皇は見えているかのように、オレの帯をほどいた。 薄いガーゼの肌襦袢の上から、皇はそっとオレの右胸を撫でた。 皇の手の平が……熱い。 何度かさわさわと撫でたあと、皇の指先が、オレの乳首をグッと押した。 「んっ!」 太ももがピクリと反応するのと一緒に、下着の中で、ペニスが跳ねた。 「雨花……」 クチクチと音がするほどキスを交わして、混ざり合った唾液を、何度も飲み込んだ。 いつまでたっても脱がせてくれない肌襦袢は、汗でじっとり濡れてきたのがわかる。 皇の指先で何度も乳首をこね回されて、痛いくらいに勃ち上がったペニスが、皇の膝にコツコツ当たるたびに、ビクビクと体が揺れた。 「はっ、はぁっ……あ、んんっ!」 じりじりとする下半身を上下左右に動かすと、皇はようやくオレの肌襦袢の紐を外した。 むき出しになった肌に、皇が小さくキスを落としていく。 さっきから散々こね回された乳首に、皇の唇が吸い付いた。 「んぁっ!」 ふるふると、体が震える。 気持ち……いい。 泣きたくなるくらい……気持ち、いい。 もう……早く……もっと……お前のことも……触らせて。 暗さに慣れた視界に入った皇の帯を、イライラしながら乱暴にほどいた。

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