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学祭騒動再び~最終日・嗚咽~④

✳✳✳✳✳✳✳ 頭を撫でられる感触で目を覚ました。 薄く目を開くと、オレを見下ろす皇と目が合った。 もう……朝? ベッドの中は、まだ暗い。 「起こしたか?」 「……ん」 「まだ寝ておれ」 「……帰るの?」 毒見役の家臣さんが来る時間になるのかな? 「ん?……帰らぬ」 皇は、オレの髪をさらりと撫でた。 「え……毒見役さんは?」 「今日は来ぬ」 「え?なんで?」 「話せば長い。まだ眠いのであろう?気にせず好きなだけ寝るが良い」 皇が、オレのおでこにキスをした。 皇……急いで帰らないでいいんだ。でももう、オレも目が覚めちゃったよ。 布団の中で、んーっと足を伸ばすと、足の先に、ぐちゃぐちゃになった着物だろう物が当たった。 「あ、お風呂入りたい」 昨日……あのままお風呂も入らず寝てしまった。首のあたりがペタペタする。 「声が掠れておる」 皇はそう言って、オレをギュッと抱きしめた。 「喉が痛むか?」 皇の胸に押し付けられた頭を小さく横に振った。 「どこかつらいところはないか?」 皇って……ホント心配症なんだよね。 今度は小さく首を縦に振ると『そうか』と、優しい声が降って来た。 「……お風呂」 「ああ……ここに風呂はない。風呂なら、零号温室が一番近い」 「じゃあ、温室行ってくる」 ここから零号温室まで、どれくらいかかるだろう?昨夜は皇に手を引かれて、ふわっふわした感じで来たから、時間の感覚もなかったし……。 田頭たちは学校に泊まったのかな?今日、学校は休みだから、本当なら誰かに会う可能性はほとんどないだろうけど、田頭たちが夕べ学校に泊まっていたとしたら、どこかでばったり会う可能性も考えられる。 そんなの……めちゃくちゃ恥ずかしい! 「今、何時?!」 早朝なら田頭たちにも会わない可能性が高い! 「ん?」 ベッドの天蓋の赤いカーテンを上げた皇が壁を指した。ベッドの外は案外明るくなっていた。 「五時だ」 さすがに五時なら会わないよね! 「温室行ってくる!あ、そうだ。サクラに渡されたオレの着替えは?」 「あ?ああ……そこに置いてあろう?」 皇の指さした先に、サクラのうちのブランド名『early spring』とデカデカ書かれた大きな紙袋があった。 袋の中に手を入れると、ふわりとした感触が指に当たった。 ……え?オレの制服……こんなふわふわしてないけど。 恐る恐るそのふわふわした物を掴んで取り出すと、真っ白なもこもこした物が目に入った。 「何これ?」 「藤咲が寄越したそなたの着替えであろう?」 オレの着替え?このもこもこが? 「……」 やられた!またサクラに騙された! オレの着替えって言ってたから、てっきり制服を入れてくれたのかと思ってたのに!何?このもこもこ! いや!もしかしたら奥のほうに、制服も入れてくれてるのかな? そう思って、紙袋の中身を全て出しても、あとからあとから白いもこもこが出てくるばかりで、オレの制服は入っていなかった。 ……だよね。 この白いもこもこを見た時から、サクラが渡してくれた着替えの中に、オレの制服なんて入っていない気はしてた。だってサクラだから! ガッカリしながら紙袋を覗くと、一番下に手紙が張り付いている。 剥がして見ると『ばっつんのサイズで作った特製パジャマだよ♡がいくんに楽しんでもらう仕様になってるから♡ごゆっくりー♡』と、書いてあった。 「んだよ!それっ!」 楽しんでもらう仕様って何だよーっ?! 手紙をくしゃくしゃに丸めて、紙袋に投げ入れた。 「オレの制服ー!」 生徒会室まで行けば、オレが昨日脱いだ制服があるはずだけど……。 田頭達が泊まっていたら、かち合っちゃう! いや!こうなったら、恥ずかしいとか言ってる場合じゃない!田頭たちに会うリスクを冒してでも、生徒会室の制服を取りに行かないと! だって曲輪まで何を着て帰ればいいわけ?この白いもこもこパジャマ?昨日の女装大会の振袖?どちらを着て帰っても、ツッコミどころ満載じゃん!ありえない! 「ああ、そなたの制服なら、零号温室に揃っておる」 「えっ?!ホント?」 「ああ。そなたがまたいつ粗相をするやもしれぬゆえ、梓の十位に揃えさせた」 「粗相?」 「いつぞやそなた、吐き出した物をズボンに零して騒いだではないか」 「へ?」 吐き出した物をズボンに? 吐いた物がズボンに付いて騒いだことなんてあったっけ?昨日吐いたのは、寝不足もあって、体調を崩してたからだと思う。 でもここのところ、吐き気に襲われることはそうそうなかったし、学校で皇と一緒にいて、吐いたことなんてあったっけ? ズボンに零して騒いだ? ズボンに、零して……? しばらく考えたあと、一学期の中間テストの最終日のランチ当番の時、皇に触られて、制服のズボンに”アレ”を飛ばした記憶が蘇った。 「どぅあっ!」 吐き出した物って……口からじゃなくて……そっちー?!

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