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第4話

4 ※無理やり、寝取られ注意 ※苦手な方は飛ばしてください。  光は18歳になった。  これまで卒業式に父が参列したことはない。高校のそれも例外ではなかった。  進路は東京の有名大学に決まっていた。本当は地元の大学に通いたかった。桐矢と会えなくなるのが嫌だから。しかし父は光が大学のランクを下げることを許さなかった。  何も言われないが、父は光の覗き見に気づいていたのかもしれない。光を東京に追いやれば、いつでもひと目をはばからずに桐矢を愛することができる。  毎日ではないが、それなりに寝食を共にしているのだ。光が情欲に淀んだ目で桐矢を見ていることに気づかないはずがない。父が桐矢から光を遠ざけようと画策したのだと、光は確信している。  その程度で光は諦められなかった。  長年の懸想は行き場を失って蓄積したまま、もはや恋とは呼べないほどに濁りきってしまった。  その想いに、あえて名前を付けるなら「執着」だ。  3月にしては、やけに暑い朝だった。  燃えるような執着心を抱えたまま、引っ越しの日がやってくる。  荷物はすでに下宿先に送ってあり、鞄ひとつの身軽な出立だった。父は日中家にいないので、当然見送りは桐矢一人だ。通いの家政婦も今日はいない。家政婦が来ない日に、光が決めたのだ。  今日しかない。桐矢に触れられるのは。  その白い肢体を何度も夢に見た。いくつになってもきめ細やかで敏感な肌。後ろでしか達することができない淫らな躰。  期待と不安で心臓が強く脈打つ。 「光くん。どうしたの?」 「ううん。なんでもないです。喉乾いたな。桐矢さんも、麦茶飲む?」 「ありがとう。もらおうかな」  鞄を玄関に置き、キッチンに向かう。桐矢に背を向け、麦茶を冷蔵庫から取り出した。  冷凍室から氷をすくいあげ、麦茶の入ったグラスに入れる。氷と一緒に桐矢のグラスにだけ一つ、白い錠剤を落とした。通販で買った媚薬だ。行きずりの男にこれを試したら、ものの数分で腰が砕けていた。  グラスを軽く振ると、錠剤はすぐに溶けてなくなった。 「おまたせ」 「ありがとう」  光は氷が入った麦茶を一気に飲み干す。会話をしながら、桐矢も自分のグラスを飲みきった。 「寂しくなるね」 「別に。いつでも帰ってこられるし」  会話の内容など頭に入ってこない。光は生返事をしながら、桐矢の様子を伺い続けた。 「そうだね、いつでも……あれ、なんか……」  桐矢がふらっとして頭に手を当てる。  もう辛抱できない。  光はその手を乱暴に掴み、リビングのソファに桐矢を押し倒した。 「光くん……?」 「本当は俺も寂しい。だから、桐矢さん。俺に思い出をください」 「なにを……!」  戸惑う桐谷の、薄手のシャツの下に手を入れる。汗ばんた生々しい肌の感触。やっと触れられたそれに歓喜し、光はゴクリと喉を鳴らす。 「駄目だよ、光くん! こんな、ひぁっ!」  服の下で、胸の蕾をきゅっと摘むと、桐矢が早くも甘い声で鳴いた。 「ここ、いいんですよね。知ってますから」  無理やり押さえつけたまま、桐矢の胸の小さな尖りをくりくりといじる。  頬が赤く染まり、肩で息をする姿は扇情的だった。桐矢は今、押し寄せる快楽に耐えているのだろう。荒波のような情慾は薬のせいだが、桐矢自身はそれを知らない。 「だめ……んっ、なんで……」 「桐矢さんが淫乱だから」 「嫌、ん、ちが……んぅ」 (桐矢は酷くされるのが好きだ)  光は何度となくそれを見てきた。  もっとその躰をいじり回して、伴侶ではない男の手で絶頂させたい。光は欲望のままに、桐矢のスラックスの前に手を掛けた。  見せつけるようにゆっくりと開き、スラックスを脱がせていく。アイロンのきいたそれの下に桐矢が履いていたのは、黒のジョックストラップ。ストラップ部分が細く、レースがあしらわれているという、ひと目で用途が分かる代物だ。桐矢の白い肌によく映えている。  薄くなめらかな腹を撫で回す。臍に指を這わせると、桐矢は甘い声で鳴いた。 「はぁ……あ、ん」 「こんなとこも気持ちいいの? 全身が性感帯みたいだ」 「や、ちが、なんか変……う゛っ、あ」  桐矢の臍の少し下のあたりを、光が指でぐっと押し込む。 「この中がいいんでしょう?」 「やめ、光く……あっ、はぁっ」  桐矢の手をソファに繋ぎとめる手はそのままに、腹を押さえつける手を離す。  薬が効いてきたのか、桐矢の抵抗する力が緩んだ。その隙に、自分のしているネクタイを引き抜き、桐矢の両手を頭の上で固く縛った。  苦しげにもがく桐矢を眺めながら、光はポケットから小分けのローションを取り出し、端を口に挟んで封を切る。 「な、に……」 「何って。よく知ってるじゃないですか」  光の唇が三日月形に歪んだ。  

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