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3*性描写
ガリガリ、ガリガリ、最初は不気味に思えたその音も、慣れてしまった今では単なる耳障りな雑音でしかない。亡霊の嫌がらせか。苛立ち始めたブラッドは、岩に背を預けて座り込み、立てた片膝に置いた肘とは反対の手で足元の小石を拾い、正面の岩へ投げつけた。歯牙にもかけなかったようで、音は止まない。
「彼らが怒るぞ」
「怒らせておけばいい。死んだ奴なんか知るか」
「帰してもらえなくなる」
「こっちも嫌がらせしてやれば、うんざりして早く追い出そうとするかもしれない」
クバルの制止を無視し、ブラッドは再び小石を岩へぶつけた。不快音が消える訳でもなく、自身の気が晴れる訳でもない。だが、そうでもしないと間が持たないのだ。
隣に胡座を掻くクバルは、胸の前で腕を組んで微動だにしない。広がる沈黙の中、亡霊が岩を擦る音と、小石が岩にぶつかる音だけが響く。
気まずい。
今でこそある程度の必要な会話はするし、夜は身体を重ねる間柄(夫婦だからだ)ではあるが、つい先日まではブラッドを乱暴に組み敷いて犯していた男だ。
ツチ族との争いが落着してヘリオススへ帰還してからも、実を言うとお互い顔を合わせたのは夜だけだった。ヤミールとカミールから聞いたが、日中は死んだ戦士の家族へ会いに行ったり、弔いに訪れた近郊の村の使者の対応をしたりしていたらしい。生き残った戦士と手合わせをしている光景も見た。ブラッドが重傷人の治療されているテントへ立ち寄ると、そこには腕を失ったり腹に深い傷を負った戦士に声をかけるクバルの姿があった。
何だ、王らしいこともしているのかと今さら改めて気づく一方で、互いに向き合う姿はまだ夜の服を脱いだ裸の身体だけだ。
今日、こうして戦士を伴ってふたりで狩りに出かけたのも初めてだし。まぐわう訳でもないのにふたりきりでいるのも初めてだし。先日、クバルの生い立ちについて多少の話は聞いたものの、これまでまともな会話などしてこなかった。クバルについて知らないことは無限にあるが、今さら、何を話していいのかもわからない。
それは相手も同じなのだろう。突然、クバルにしてはぎこちなく口を開いた。
「アステレルラは、好物はあるのか」
ちらりと横目で視線を寄越して、窺ってくる。普段は真正面から見据えてくるクバルの、なかなか見慣れない仕草だった。
「好物? そうだな……鹿肉のパイだな」
知り合ったばかりの者同士が交わしそうなよそよそしい質問だ、と思いながらブラッドは答えを返す。
「パイ?」
「小麦粉とバターで作った生地で、具を包んで焼くんだ」
「アトレイアの王族が食うのか」
「いや、庶民も食う。鹿肉は食わんだろうが」
「そうか……ダイハンでは作れない」
膝に落ちた声音がなぜか気を落としているように聞こえるのが少しおかしくて、ブラッドは喉で笑った。
「当然だ。逆にダイハンでしか食えないものもあるだろ」
「だがパイは好物なんだろう。女王が望めばある程度のものは手に入る。アステレルラが望むものは与えてやりたい」
「何だそれは……」
「お前の望むものは?」
首を傾けてこちらを向いたクバルの瞳の色の鮮烈さは、薄闇の中でもよくわかる。じっと見つめられると居たたまれなくなって、視線を前方の岩へ移した。
「食い物では別に不自由してねえよ。慣れたしな」
「他にはあるか」
「……望むものか?」
頭の中でその言葉を反芻した。答えを出すのが難しい問いだ。
ダイハンへ嫁いだばかりの頃は、乾いて熱いだけの、野蛮な獣たちが暮らす赤い大地から去りたくて仕方なかった。アステレルラとして、クバルの捕囚として支配されるくらいなら、アトレイアには戻れなくてもいいからどこか知らない遠い異国へ逃げ延びて別人として生きるのもいいかと思った。
だが今は、そのような望みは一片も脳裏を過ることがない。
ならば、アステレルラとして、ヘリオサ・クバルとダイハンと守っていくのか。正体を明かさぬまま、本当の名前を教えないまま、クバルが倒れる時まで。
「アステレルラ?」
この先の未来、クバルとともにダイハンで生きていくのであれば、彼の隣に立つのは偽りの自分ではなく、本当のブラッドフォードであるべきだ。到底不可能なことで、口にできる望みではないが、今、ブラッドが望むことはそれに尽きた。
「ああ……お前、昼に戦士と手合わせしてるだろ。あれに俺も混ぜろ」
「望みはそれか?」
「腕が鈍っちまうからな。敵との戦いについて行った時、足手纏いにはなりたくない。ガンバスもまともに狩れないんだからせめて剣だけは振れないと、女王として役立たずだろ」
「ツチ族と戦った時も、アステレルラは足手纏いにはなっていない。だが、わかった。手配する。戦士たちには、お前相手には少し加減をしろと言っておく」
「は? 加減なんて必要ないだろうが。俺が戦士に押し負けると思ってるのか?」
「侮っている訳じゃない。ただ、お前には夜、身体に負担をかけている」
ブラッドは思わず閉口した。
「昨夜も、無理をさせた」
確かに何度も求められた。そして、勘弁しろと宥めたが、説得力がなかったのも事実。回数は思い出せず、いつ眠りに落ちたのかもわからなかった。
「別に今さらだろ。お前に抱かれたくらいでへたれるほど軟弱にできてない」
「今夜は、加減する」
今夜。そうだ、今夜もなのだ。女王である限り、クバルの妻である限り、ブラッドは毎夜組み敷かれる訳だ。
クバルは毎夜抱くと言った。そういうものだと頭では理解しているが、どうして飽きもせず自分を抱きに来るのか、ブラッドはいまいちクバルの思考が読めなかった。
「俺なんか抱いて楽しいのか? 背丈も体つきも変わらない、お前と同じでかい男だぞ」
「それは見ればわかる」
「義務感からか?」
「義務じゃない。抱きたいから抱く」
「……女を抱きたいとは思わないのか?」
「思わない。お前はどうだ」
問い返されるとは思わず、ブラッドは言葉を詰まらせた。そんなことを考える暇も余裕もなかった。アステレルラが望むものは、とクバルは言った。もしかして望めばダイハンの女を抱くことが許されるのかもしれないが、毎日クバルの相手をするだけで手一杯だ。
「国では女を抱いていただろう」
「そうだな。でも今は……別に必要ない」
何だその返答は、とブラッドは答えてから後悔した。今は、って。まるでクバルがいるから必要ないみたいな言い方ではないか。いや、実際そうとしか聞こえようのない表現の仕方だったが。
おもむろに動いたクバルの腕が膝に触れて、ブラッドは視線を動かした。
「俺は、今もこれからも、女が必要とは思わない」
薄闇の中で、宝石の色とした目がふと緩んだ。どこを見たらいいのかわからなくて視線を彷徨わせる。何だかおかしな雰囲気じゃないか――そう思うとクバルの顔が近づいて、額に乾いた唇が触れた。
「おい……、ん」
唇が肌を降りて、目元を、鼻先を、頬を辿る。最後に唇を吸われてブラッドは戸惑った。
あの夜も口づけをされた。一体何だったのか考える暇もなかった。今もそうだ。唇は肌を撫でながら、首筋を降りていく。さすがに肩を押し返しながら、ブラッドは制止の声を上げた。
「待て待て……何のつもりだ」
「いつ霧が晴れるかわからない」
「……暇潰しにやろうってのか!?」
「抱きたくなったから抱くだけだ」
抱きたくなったからって、どこででもやるのか。獣か。
栓のない応酬を繰り返している間にも、クバルの手はブラッドの上着の裾を捲り上げ、下履きの隙間に入り込み、下着の上からまだ柔らかいそこを優しく揉んだ。
「外でする趣味はない」
「ダイハンの民は皆する。気にしない」
「そうだったのかよ……」
「それに岩に囲まれてる」
「外に見えなくても、亡霊が見てるだろ」
ガリガリ、ガリガリ、音がする方に視線を向けるが、クバルは「見られても構わないだろう」と淡々と言いながら、ぎゅっと布越しにペニスを握り込んだ。
「っ……」
「うんざりして早く追い出そうとするかもしれない」
それはさっき俺が言った、と息を詰めながらブラッドは反論したが、すぐに唇を食い縛ることになった。刺激に正直に反応した性器は、わずかに芯を持ち始める。
「っは、……う…」
クバルの手淫は、いつも少し痛いくらいの強さで施される。痛いだけならいいのだが、強めの握力で搾られると強引に性感が呼び起こされる。亀頭が剥き出しになって、割れ目が潤むのが自分でもわかった。
ブラッドは観察するように自分をじっと見つめる瞳を睨み、自然と寛げた足の間に突いたクバルの腕をそっと掴んだ。やめろという意味ではない。早く終わらせろという意味だ。
意図を組んだらしいクバルは、下着ごとブラッドの下履きをずり下ろした。熱を持った下肢には外気の温度は少し肌寒い。
「説得は諦めたか」
「今止められても困る……」
クバルの熱い掌が亀頭を包み込んだ。溢れた粘液でぬるりと滑り、快感を加速させる。数時間前、岩のベッドの上で何度も射精した筈なのに、律儀に反応して勃起している自身の性欲に嘆息したくなった。クバルのことをどうこう言えない。
「っふ、……く、ん……」
指で作った輪がごしごしと竿を扱く。時折緩め、指の関節で敏感な裏筋を強くなぞられると自分でも制御できずに腰が浮く。
大きな褐色の手が、自分の先走りに濡れながらペニスを扱いている。その淫猥な光景を見るのが堪えられなくなって、ブラッドは瞼を伏せて熱い吐息を吐いた。
下肢でぐちゅぐちゅと水音がする。扱く速さが増して、ブラッドは奥歯を噛んだ。内腿が引き攣っている。いきそうだ。
「アステレルラ」
熱を孕んだ声音が耳元で囁く。声とは正反対に容赦なく追い立てられ、ブラッドはクバルの手の中に吐精した。
「は、…っ」
そろりと瞼を上げると、クバルの神秘的な赤色がじっと見つめている。行為中、気づけば時折そうして黙ってブラッドを観察するように熱心に見ているのだ。居たたまれなくなって視線を逸らすが、クバルに気にした風はない。
ゆっくり視線を彷徨わせると、触れていない筈のクバルの下肢が膨らんでいる。布越しに主張する雄の形に、ぞくぞくと期待に似た震えが駆け抜けるのを、ブラッドはまだ認めたくなかった。
手を突いた岩はひんやりと冷たく、表面は薄く砂で覆われていて粉っぽい。どこかに亡霊がいるかも、と思えば頭を理性が支配しそうになるのを、腸壁を探る指が強引に引き戻す。
「っん、ん……」
「もう、柔らかいな」
「それは、少し前までしてたからだろ……」
背後からクバルの指が中を広げていく。ほんの数時間前まで雄を受け入れていたそこは程よくぬかるんで、指を容易に飲み込んでいく。
ガリガリ、ガリガリ、岩の音が聞こえてくる。先刻よりも大きくなったような気がして、ブラッドは背後のクバルを肩越しに振り返った。
「何かうるさくなってねえか……」
「気にするな。害はない」
集中しろ、と首筋に囁いて、クバルの硬い指の腹が内側の浅い場所を抉った。内腿が引き攣り、中に埋まった異物を括約筋が締めつける。
外でするのは初めて、立ってするのも初めてで、ましてや亡霊に見られながらするのも初めてだった。強引に性感を引き摺り起こされた身体は受け入れる準備はしているものの、岩に突いた腕と開いて立った脚は少し強張っている。
今夜は加減すると言ったのに、これではあまり変わらない。
「んっ……」
中を開いていた指が、水音を立ててゆっくり抜けていった。代わりに尻の狭間には、指よりも熱くて硬いものが押しつけられている。濡れた先端が窄まりの近くをずるりと滑るが、まだ中には入ってこない。
「早く、入れろよ」
「身体が緊張している」
熱を帯びた唇が、無防備な項に押しつけられた。薄い皮膚を舌で撫でられ、むず痒さに首を振った。
「そりゃ、こんな場所でするのは初めてだからな」
「大丈夫だ。亡霊は気にするな」
「あ……」
首筋を少し強めに吸われるのと同時に、熱い塊が狭い入り口を抉じ開けて入ってきた。ぞくぞくと、寒さからではない震えが背筋を駆け上る。
「ダイハンでは人に見られることを気にしない。身体を繋げることは恥じることじゃない。太陽に見下ろされながら、皆抱き合う」
「俺はダイハン人じゃない……」
熱を持った褐色の手が腰を這い、薄く血管の浮き出た下腹を妖しく撫でた。そこで再び硬さと大きさを取り戻して起ち上がっていたペニスを握られると、下肢から力が抜けていく。先端だけ飲み込んでいたものがゆっくりと身体の中に入ってきて、ブラッドは長く息を吐いた。
「お前はダイハンのアステレルラだ。堂々としていればいい」
「っ、ぁ……」
ぱちゅ、と優しく中を突かれる。昨夜の快感を覚えているブラッドの身体は素直に刺激を受け取って悶えた。
「お前の身体は綺麗だ」
「は……? 訳わかんねえこと言ってんな……」
「傷は少ないが、戦う者の身体だ。腕も肩も背中も逞しくて、力強い。女王だが、戦士に引けを取らない……誰に見られても、胸を張っていろ」
焦れったいほどゆっくりと、身体の中のペニスが引いて出て行き、また緩慢な動作で肉壁を開いて進む。硬い亀頭が敏感な場所を擦るのが堪らず、眼前の岩に額をつけて身を捩る。
「ぅ、ん……お前は、人前で俺を抱きたいのか……?」
「王と女王は、民の前では抱き合わない」
「なら、いい……」
「アステレルラが望むなら、そうする」
「勘弁しろ。裸になるのは、お前の前だけでいい……」
まだ大きさを慣らすように施されていた抽挿が、動きを止めた。粘膜に包まれたクバルのものがどくどくと脈打っているのがよくわかる。
「なら、早く終わらせないと」
濡れた吐息が耳元で囁くのと同時に、膨らみを増した怒張が奥まで肉を切り開いた。
「っア……!」
臍に走ったツンとした痛みが、すぐに愉楽にすり変わる。下腹がびくびくと震え、クバルの手の中に包まれたペニスの先がとろりと先走りを漏らした。
「アステレルラ……」
後ろから何度も貫かれる。重みに耐えるように岩へ突いた片手を褐色の手が覆い、指の股をぎゅっと握り込む。
射精したいと訴えるペニスを痛いくらいの力で扱かれて、ブラッドは上げそうになった悲鳴を飲み込んだ。内腿が痙攣し、膨らんだ亀頭の先から迸った白濁が赤い岩の表面を濡らした。
引き絞った腸壁の中から、上り詰めた雄がずるりと抜け出て行った。背後で息を詰める音がし、背中が熱いもので濡れる感覚がした。
汚れるのも気にせず、背中に熱い体温がぴたりと寄り添う。
「霧が……晴れてきた」
荒い呼吸を繰り返す声に促され、潤む視界で周囲を見渡すと、辺りに充満していた靄が徐々に薄れてきた。気づけば、岩を引っ掻く耳障りな音も聞こえなくなっていた。
「トゥグリの森を知ってるか?」
傷のない細い手から濡れた布を受け取りながら、ブラッドは上半身裸で岩の寝台に腰かけて自分の僕を見上げた。ヤミールは細い顎を引いて、無沙汰になった手を身体の前で組んだ。
「誰でも知っています、アステレルラ」
霧が完全に晴れてから、ブラッドとクバルは巨岩の森の出口を探した。ブラッドが馬のところへ戻ろうとしていた時はいくら歩いても辿り着かなかったのに、あっと言う間に風の当たる場所へ出てしまった。岩に繋がれた二頭の馬が、ぶるる、と不機嫌そうに鼻を鳴らしていた。
収穫なしに帰るのは堪えられなかったから、それから一頭、ようやくひとりでガンバスを狩った。森で見失った巨体のガンバスよりは一回り小さかったが、十分な大きさだった。狩った獲物たちは今夜の馳走にしようと決めてヘリオススへ戻った。
途中で待ち構えていたグランが言った通り、帰るとヤミールとカミールが寄ってきて「お怪我は」と過剰な心配をされた。
女王の部屋で朝食を摂る前に身体を拭きたくて、ヤミールに濡らした布を絞ってもらった。カミールは寝台の側のテーブルで、果物を切り分けている。
「亡霊が出ると聞いたが」
「トゥグリの森には、そこに迷い込み出られずに死んだ者の魂が残っています。炎に焼かれなければ太陽へと還れませんので、そこにいるしかないのです」
湿って冷たい布で、ブラッドは首筋を拭った。森から出てガンバスを狩った時に汗を掻いた。その前にも汗を掻いた。腕を伸ばして背中を拭おうとすると、ヤミールが「私が」と言って隣に腰かけブラッドの手から布を取った。
「森では亡霊が悪さをします。帰れなくなった自分と同じように、迷い込んだ者をそこへ閉じ込めてしまうのです。それから、迷い人に幻を見せるそうです」
「幻?」
「幻想を見せて混乱させるのです。その幻想は、迷い人によって違います」
ヤミールの恭しい手つきが、優しく背中を撫でる。
「なぜだ?」
「迷い人の望みを反映したものだからです、アステレルラ。その人が望むものを見せて、帰さないようにするのかもしれません」
ブラッドは今朝トゥグリの森の中で見たものを思い返したが、目にしたのは辺りに充満する白い靄と、蠢く黒い影だけだった。
だが幻を聴いた。見知った者の声で、名前を呼ぶのだ。ブラッドフォードと。
「帰って来られなくなるから行ってはならないと、ダイハンの民は幼い頃から母親に言われて育ちます。それでも稀に、自ら立ち入る者がいます」
「度胸試しでもしようってのか?」
「トゥグリの森について言われていることがもうひとつあります、アステレルラ」
瑞々しい果物を切り分けながら、普段共通語を話すことの少ないカミールが、双子の兄に似た落ち着いた声音で話し始めた。
「恋人同士で別々に森の中に入り、ふたりで戻って来ることができればそのふたりは永遠に結ばれるのです」
「根拠はあるのか?」
「森の中で探し人が見つかることは滅多にないそうです。見つけられるのは、見つけようとする意思、その者を想う気持ちが強いからなのです」
「どうしてトゥグリの森のことを聞くのですか?」
肩を拭いながら、ヤミールが上目にブラッドを覗いた。
「今朝、狩りで森の近くまで行ったんだ。……クバルから、少しだけ森のことを聞いた」
「そうでしたか。どうかあの場所にはお気をつけください。大変危険な場所ですから」
「誤って入り生きて帰った者はここ数年なく、恋人が互いの思いを試しに入ることも今はまったくありません」
「ああ……絶対に、間違っても入らないようにする」
双子の言葉を聞いて、首もとがむず痒くなるような感覚を覚えた。実は獣を追って迷い込んで、クバルが探しに来てくれて、ふたりで一緒に出てきたなんて絶対に彼らには言えないとブラッドは思った。
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