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第5話人間、を攫った(下)
その日、台風かやってきて、粗末な小屋を壊した。
人魚は慌ててやってきた。
海の底に住む人魚がには台風の危険がわからなかったのだ。
人魚はあやまる。
だが、小さな島には少年が無事にいれる場所はない。
人魚は仕方なく海に連れていく。
何度も酸素を口移しに送り込まれ、その洞窟に。
少年は気を失っていたが、目覚めたそこは空気があって、少なくとも乾いていた。
人間には良い環境とはいえない。
濡れたまま、ガチガチ震えていたら、誰かが言った。
「此方に来て火にあたれ」と。
驚く。
人魚は火と鉄を嫌うはずだから。
その声は人魚のものではなかった。
恐る恐るその声の方へむかった。
少年はそこで見たモノに凍りついた。
そこにはもう1人人魚がいた。
真っ黒な人魚が。
呪われた人魚。
目だけが血のように赤い。
人魚なのに火に当たっていた。
「私が怖いか」
その人魚は笑った。
人魚なのに美しくなかった。
奇怪に歪んだ顔や姿をしていた。
「醜いだろ。心の中のままの姿になったのさ。あの子は火が苦手だからね、君が乾くまではここにいない。人魚だからね、水の中の方が気楽なんだ」
人魚に勧められるまま、火に当たる。
「何故あなたは火が平気なんだ?」
そう聞いたけれど、わかっていた気もする。
だって人魚は半分人間だと言ったから。
この黒い人魚は人魚ではないのだ。
「私は人間だよ。人間だったというべきかな」
黒い人魚は人魚の父親だった。
人間が人魚を喰うと人魚に似たものになる。
でも呪われているから、人魚達にも受け入れられない。
そして、その呪われた人魚と、その人魚が人間であるとき喰らった人魚の子供が少年の人魚だと教えられた
人魚に恋して攫い、死なせたのだと。
人魚は海でしかいきられないから。
殺してしまった人魚を喰った。
愛しくて。
裂いた腹の中に卵があった、
その卵と一緒に海に潜った。
もう人間ではなくなっていたから。
その卵が何なのかもわかっていた。
まだ誰とも性交したことのないまだ幼い人魚を犯したのだから。
そして人魚でも人間でもない存在が産まれた。
人間でもなく人魚でもない存在が、陸に恋して花嫁にすると少年を攫ったのだ。
哀れな存在。
人魚達は受け入れない。
人間から産まれた存在など。
そして人間も受け入れない。
とうみても人間ではないから。
少年からみれば人魚でも、人魚達からは人間なのだ。しかも仲間を攫い犯し、殺して喰った人間から生まれた。
「だから君を攫った。それでも、愛されたくて」
黒い人魚はため息をついた。
「人間は人魚を愛してはいけない。人魚もまた。生きる世界が違うのだ」
その声は苦痛に満ちていた。
「愛するモノを殺して永く生きるのは、地獄にいるのと同じだ。あの子にも君にもそうあってほしくない」
黒い人魚は、生きながら焼かれるような自分を指差した。
醜い姿は自分の想いがこの姿にしたのだ、と言って。
こんな心にはなるな、と言って。
そして少年を逃がしてくれた。
火を恐れる人魚はここに来ないから。
この洞窟をずっと云った先に出口があり、そこからなら、浜辺まで泳いでいけるだろうと。
二度と海には近付くな、と黒い人魚は言った。
少年は人間の世界に帰る。
そこは、逃げ出した場所とは違って・・・少年は保護された。
そしてチャンスを与えてくれる人もいた。
少年は夢見た場所にたどり着いた。
ちゃんと生きられる場所だ。
やっと生きのびて逃げられてうれしかったはずのに、夜毎人魚の夢をみた。
夢の中では自分から腕を伸ばしていた。
愛されて抱かれた夜の記憶が、たまに思い出す酷く犯された記憶から少年を守った。
「オレの花嫁」
優しいキス。指。舌。
慈しむように中まで舐められた。
その大きなペニスも一最初の日だけは少年を引き裂いたけれど、そのあと泣かされたのは快楽のためだ。
限界まて引き伸ばされ、涎を、ながした。
突き出たその異様なペニスのコブが、蠢いて、中の襞を逆立てるすような感覚に全身の血が逆流するように感じた。
苦痛に似てるのに甘い。
心の鍵を壊してしまう。
快楽。
欲しくて自分から咥えたのは初めてだった。
「愛してる」
優しく繰り返され、だけど、容赦なく中を裏返すように捏ねられた。
「奥に頂戴!!」
その種を欲しがった。
子供などうまれるはずがないのに。
ないのに。
ないんだ。
生まれないんだよ。
花嫁じゃない。
オレじゃない。
だから。
だから。
去ったのだ。
逃げたのだ。
そこが生きる場所じゃなかったことも理由だったけと。
欲しがる子供を生んではやれないから。
少年は夢見た朝泣いた。
愛していたと知ったから。
一年後、海辺に近付いてしまった。
浜辺で、捕まる。
まるで来るのがわかっていたかのよう。
泣く人魚に抱きしめられる。
でも、行けない。行けない。
生きる場所が違う。
た陸に上がれても長くはいられない人魚と海では生きられない人間。
違うものなのだ。
「子供だってオレにはうんでやれない」
少年は叫ぶ。
でも人魚は嫌だと泣き叫ぶ。
子供が生まれなくていい。
お前だけでいいと泣く。
その逞しい腕は少年を抱きしめて離さない。
人魚は死んでいいという。
陸に長くいたなら死ぬが死ぬまでそばにいたいと。
少年はダメだと泣く。
でも抱き合う。
浜辺で少年は人魚を受け入れた。
自分かから咥えた。
欲しかったから。
泣きながらそれを愛した。
人魚のモノだったから。
顎が外れそうになるほど、咥えて。
口の中で爆ぜるのを愛しく想い、
飲んだ。
一滴でも漏らさぬようになめる。
子供を産んでやれたなら、そう想いながら
その指で丁寧にひろげられるのも、大切に舌で濡らされるのも。
わすれられなかったその通りで。
大切に扱われることに身体が喜んでしまう。
巨大な凶器のようなペニスさえ、身体は喜ぶ。
快楽のためではなく、求められ奥深く埋められることだから。
それこそが快楽を引き出すのだと、教えられる。
人魚としかしたくない。
人魚がいい。
「オレのだ。オレの」
少年は泣き叫び、印のように人魚の背中に爪を立て、首筋を噛む。
人魚は嬉しそうに笑う。
傷つけたのに。
少年は人魚を連れて帰ってしまう。
ふたつに別れてはいても人魚のモノとは異なる人魚の脚を服に隠して。
街に連れてきてしまう。
人魚は帰らない。
そして、弱っていく。
弱って弱って。
少年は嫌がる人魚を無理やり海に連れて行ったが、帰らない。
動かなくなる。
死んでしまう。
死にたい、お前がいないなら。
人魚はそう言ってからもう動かない。
黒い人魚か現れた。
夜の黒い海から、おぞましい姿を現した。
そして、少年に聞く。
どうしたい?と。
少年は言った。
彼を海へ。
孤独に生きろと?
人魚はひとりしか愛せない死ぬまで。
それでもいいのか?
黒い人魚は言う。
少年は泣いた。
自分もそうだと。
でも生きて欲しいと。
愛していると。
愛する者が世界のどこかで生きているのなら耐えられると。
泣いたのは黒い人魚だった。
黒い涙を流した。
黒い人魚は自分の心臓を取り出し少年に与えた。それをたべたなら、海で生きられると。
人魚と同じ世界にいられると。
これは呪いではない。
私からの祝福だと。
少年は心臓を受け取った。
黒い人魚は微笑んで泡になって消えた。
やっと、消えることが出来たのだ。
呪いはとけた。
少年は心臓を食べた。
身体が焼かれる。
焼き尽くされる。
それは、生まれ変われるよう。
少年は人魚を連れて海に沈む。
脚は美しい尾鰭に変わる。
水の中で人魚は目を覚まし、目を、見開く
まるで夢見た者のよう。
少年は微笑む。
人魚も微笑む。
抱きしめられて、新しい下半身のそこを弄られた。
ふたつの切り込み。
一つの切り込みの中にはペニスが入っていた。
もう一つの切り込みの中にあるソレに少年は戸惑う。
それは今までなかった器官だ。
指を入れられ、思わず喘ぐ。
ああ、これは人魚のもう一つの・・・。
「オレの花嫁」
人魚が囁く。
海の中で。
もう孤独ではない人魚。
呪いはとけたのだ。
泡になり消えた。
そして今、本当に花嫁がいる。
少年は人魚にキスをした。
二人はすぐに愛しあうだろう。
そして、子供もうまれるだろう。
もう寂しくはない。
END
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