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♯2 即興曲〝桜隠し〟3

 鼻歌を歌いながら、冷蔵庫から食材を取り出し、手際よく調理していく。  大根、にんじん、白菜、しいたけ、えのき、鮭、小ねぎ。    鮭を焼いてほぐし、野菜を切り、ご飯を洗って粘り気をとり…。  だし汁、みりん、醤油の中で材料を煮て、塩で味を整え、ご飯と卵を入れてふんわりと混ぜ、小ねぎをぱらぱらと振りかければ…。 「よし、できた!」  具だくさん、栄養たっぷり、優しい味付け。  おいしそうな卵雑炊の完成だ。  雑炊、飲み物、デザートをのせたおぼんを持ち、真雪はいそいそと防音室へと移動する。  部屋を守る番号認証付きのドア。  慣れた手つきでピッピッと入力する、六桁の数字。  解除を知らせる電子音が鳴って、ドアが自動で開いた。桜也のいる楽園へと、真雪は足を踏み入れる。  歓喜に胸を躍らせながら。

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