36 / 164
♯4 練習曲〝憧憬〟15
桜也と食事の約束をした当日。
深夜12時、24時間営業のファミリーレストランに、仕事帰りの桜也が姿を見せた。
「お仕事お疲れさま、桜也。とりあえずビールでも頼もうか」
桜也のために注文したビールに、すきを見て睡眠薬を混入する。桜也は疑う様子もなく、ぐいっとそれを飲み干した。
あとは桜也の仕事の愚痴を聞きながら、ひたすら薬が効くのを待つ。
30分もすると、効果があらわれてきた。
桜也の頭が揺れ出し、まばたきの回数が増えてきた。会話も生返事ばかりで全然聞いていない。
「桜也、眠そうだね。
僕、車で来てるんだ。社宅まで送るよ」
「…ん。悪いな、頼むわ」
桜也を助手席に乗せ、車を発進させる。
しばらく車を走らせていると、くうくうと寝息が聞こえてきた。ちらりと確認すると、桜也は車窓にもたれ、ぐっすりと眠っている。
真雪は唇を吊り上げて音もなく笑い、行き先を変更する。目的地は、桜也を保護…いや、監禁するために作った、あの部屋だ。
ともだちにシェアしよう!