真雪は怒涛の勢いで準備を始めた。 　郊外の中古住宅を買い、「ピアノの練習室」という名目でリフォームする。 　広い防音室を設置し。 　バスルームとトイレを併設し。 　番号認証のついた自動ドアをつけ。 　ベッドなど、必要な家具を買い揃える。 　コンクールでの優勝賞金を全部費やし、桜也を保護するための部屋が完成した。 　桜也を食事に誘うメールを打ち込みながら、真雪は心の中で桜也に呼びかける。 （桜也、僕が助けてあげる。 桜也が壊れるまで働かそうとする、ブラック企業から…！）