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♯5 ワルツ〝記念日〟1

 ここに監禁されてから、どれくらい経ったのだろう。 「…ん…」   桜也はベッドの上で目を覚ました。  ごしごし目をこすり、ゆっくり体を起こす。  まだ真雪は帰っていない。  ここにいるのは、桜也ただ一人だ。  ベッドに吊り下げられたレースのカーテンを開ける。  いつもまっさきに目に入るのは、グランドピアノ。ピアノから目を逸らし、部屋を見渡す。    この部屋にはなんでも揃っている。  漫画がぎっしり詰まった本棚。ゲーム機と、大量のゲームソフト。  動画配信サービスと繋がり、あらゆる映画やドラマが見られる、32インチの薄型テレビ。  冷蔵庫には、真雪が作った軽食が入っている。  空調によって心地よい温度が保たれ、暑さも寒さも感じない。桜也が快適に過ごせるようにと、真雪は手を尽くす。   快適で閉鎖的な部屋の中心で、桜也はため息をつく。 「こんなにいろいろ用意するんなら、服くらい渡してくれればいいのに…」

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