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♯5 ワルツ〝記念日〟10

「あ、あ…、いく、いっちゃうぅ…!」 「いいよ、桜也のミルク、いっぱい出して。もっとおいしいケーキになって、桜也…」 「っあ、あ、あ…!」  頭に火花が飛び散り、体が痙攣し、一気に脱力した。頭がふわふわして、途方もなく気持ちいい。  噴射されたドロッとした液体を、真雪の手のひらが塗り広げていく。甘さとは無縁の粗野な匂いが、部屋中に漂った。  桜也はもはや、淫らで悪趣味なケーキでしかなかった。真雪を悦ばせるためだけに作られ、ぐちゃぐちゃにされた無様なケーキ。 「はあ、あ…。最高においしいよ、桜也…!」  休みなく腰を振りながら、真雪は桜也の耳たぶを甘噛みし、吐息とともに言葉を吹き込む。 「桜也も下のお口で、もっと僕を食べて。…どう、おいしい?」 「ああん、そこ、いい…、…まゆきの、おいし、いよぉ…」  よだれを垂らしながらみっともなく喘ぎ、卑猥な言葉を口にする。そうすればより快感が甘受できると、体が覚えてしまった。もう理性なんて欠片も残っていない。  今日もきっと犯し尽くされ、気絶するように眠るんだろう。今や、これが桜也の日常なのだから。  ついに桜也は諦観(ていかん)した。  閉鎖的で卑猥な日常が、これからも延々と続いていくんだろう。外の世界に出られる日なんて、もう二度と来ないんだろう、と。

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