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♯8 プレスト〝折檻〟16

「嫌だ、もう、あんな…! 真雪、ごめんなさい、許して、許して…!」  悲痛な桜也の声を聞き、真雪は自らの行いを悔い、深く落ち込んだ。    …僕は馬鹿だ。  桜也の勤めていたブラック企業、神田マネージャー、公園にいたヤンキーたち。桜也を貶めたやつらはたくさんいる。  だが、桜也を死にたくなるほど追い詰めてしまったのは、ほかでもない。…この僕じゃないか。 「桜也、落ち着いて。もうあんなことはしない。 桜也にひどいことをしてしまった。ごめん、ごめん…!」  まぶたの裏に涙を溜めながら、ただ謝り続けた。暴れる桜也のこぶしが背中を強打しても、桜也の叫び声でキーンと耳鳴りを起こしても、真雪はぴくりとも動かない。ただただ謝罪の言葉だけをくり返す。  どれほどの時間が経過しただろう。桜也の手足が、徐々に力を失っていった。暴れ疲れた桜也をかき抱き、耳元でそっとささやく。 「ねえ桜也。 もし桜也がそんなに死にたいのなら、僕も一緒に死ぬよ。君がいない世界なんかじゃ、僕は生きていけないから」  桜也が望むなら、すべてを捧げよう。  この命すらも。  真雪はにっこりと微笑み、言った。 「一緒に心中しよう、桜也」

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