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♯8 プレスト〝折檻〟15

「桜也、桜也…!」 「ん…」  起きたばかりでぼーっとしている桜也を、真雪はぎゅっと強く、強く抱きしめる。 「よかった…、このまま目を開けなかったらどうしようって…、よかった、よかった…!」 「ま、ゆき…?」  桜也が生きている。  それだけで、すべてがどうでもよくなる。スキャンダルも、ピアニストを引退したことも。  桜也の手がそっとほおに添えられる。 「真雪、顔が赤く腫れてる。痛くないのか?」  いなくなった桜也を探している時、パニック状態だった真雪は、ろくな紫外線対策をしなかった。太陽の光を直接浴びた肌は炎症を起こし、やけどのようにじんじんと痛む。  だけどそんなこと、桜也の生死に比べたらすごく些細な問題だ。それなのに、桜也はこんなに心配そうな顔をする。  どうして桜也はこんなに優しいんだ。  泣きそうになりながら「大丈夫だよ」と返事をし、問いかける。   「ねえ、桜也…。桜也は、そんなに死にたかったの?」  桜也はさっと青ざめた。  折檻のような性行為の記憶がフラッシュバックしたのか、桜也は猛烈に暴れ始めた。両手をふり回しながら、のどが引きちぎれたような声で叫ぶ。

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