7 / 7

第7話

「俺は、亘さんが好きです」  不安げに、祭が眉をハの字に下げる。映画の熱が冷めないのか、赤く染まった頬と緊張した表情がアンバランスでかわいい。  亘が口を開こうとすると、それを祭が遮る。 「別に付き合いたいとかそういうんじゃなくて! あの。こんな俺ですけど、これからも友達でいてくれますか?」 「それは、ちょっと」  祭がビクッと肩を震わせる。  その肩を正面から掴み、祭の揺れる瞳をじっと覗き込んだ。 「俺は祭さんと付き合いたいです」 「え……。えっ!」  祭は困惑して、華奢な指で口を覆った。  告白した当人の亘も、内心では激しく困惑していた。勢いで言ってしまったが後悔はない。この瞬間に言わなければ、いつ言うというのか。 「でも、俺。男で……」 「そんなこと、関係ありません。祭さんが好きです。ずっと一緒にいたい」  この展開は予想外だったのだろう。祭は困ったようにもじもじしている。  もしかしたら本当に付き合う気は全くなくて、心から亘の言葉に困ってるのかもしれない。いたたまれない沈黙に、嫌な想像をしてしまう。 「……もしかして、そういう『好き』じゃないとか……」 「いえ! そういう『好き』です!」 「それなら、恋人になってもらえますか?」 「こ、恋人!」  祭の顔が、これ以上ないほど真っ赤になる。 「ダメですか?」 「……ダメじゃないです。俺も、亘さんの恋人になりたい」  言い終わらないうちに、亘は祭の体をぐっと抱き寄せた。小柄な祭は、亘の腕にすっぽりと収まる。  今までにない満たされた感覚を味わいながら、明日にでもソファを買いに行こうと亘は思った。

ともだちにシェアしよう!